第80話 怖いんだもん。
私は小さい頃から雷がとても怖かった。
雷が鳴った時は絶対に一人で寝れた記憶がない。
いつもはお父さんや誰かが一緒に寝てくれていた。
時には、京くんと一緒に寝ていたこともあった。
でも、今は一人暮らし。もちろんお父さんなんていない。
私は布団に入った。そして目を閉じて寝ようとした……。寝ようとしたのに、全く寝れる気がしない。
どうしよう……。京くん、今でも一緒に寝てくれるかな。
私はベッドから出て、鍵を取り、パジャマを着たまま部屋を出た。
外を見ると、雨がザァザァ降っている。ゴロゴロと雷も鳴っている。私は鳴るたびに体が震えてしまう。
私は、隣の部屋の鍵を開け、恐る恐る入った。
暗い中ゆっくり歩き、京くんが寝ているベッドの前まできた。
私は京くんが寝ているベッドの壁側に入ろうとした。
っ!
そこにはくるちゃんがいた。
一瞬、一緒に一夜を過ごしているのかと思ったが、くるちゃんを見ればわかる。
くるちゃんは体を丸めて寝ている。
これは、おそらく怖がっているからなのだ。私も雷の時に寝るのはこの形で寝る。意識してではなく自然とそうなってしまうのだ。
仕方がないか。私は京くんの左腕を枕がわりにして布団に入った。
うん。なんか懐かしいなぁ。小さい頃は私の頭を撫でたりして泣いてる私を慰めてくれたんだよね。
私は体を丸めて京くんの服を掴んで目を閉じた。
「大丈夫だからな……」
「えっ、」
おそらく京くんは今寝ている。
でも、京くんは右手で私の頭を撫でてくれた。
なんだろう……。とっても久々だな。私はこういうところが大好きなんだよ。
「大好きだよ」
私は小さな声で呟き、さっき開けた目を再び閉じた。
なんだろうね。京くんが一緒にいてくれるだけで全く怖くないや。
ありがとね。
「あ、おはよー」
そんな軽い挨拶をしてきた真昼。その顔は何か明るく、昨日の夜何かあったのかと聞きたくなるような顔だった。
まぁ、真昼に関してはこういう状況になることは理解できる。
真昼は小さい頃から雷がとても苦手で、よく一緒に寝てあげたものだ。
でも、小学生じゃあるまいし、流石にないだろ。
「お、おはよーじゃねえよ。なにしてるんだ。もしかして、まだ雷が怖いのか?」
聞くと、真昼はなぜか笑顔で「うん」と返事をした。
「ほんと真昼はずっとビビリだよな。一人で夜ぐらい寝れるようになっとかねえと、この先一生一人暮らしなんてできねえぞ。それと、もう高校生なんだから、勝手にベッドに入ってこられると……、なんか色々と勘違いしてしまったりするからやめとけよ」
「うん」
おい、だからなんでお前はそんなにも機嫌がいいんだ?
本当に昨日の夜何にもなかったのか?!俺別になにもしてないよな?!いや、それで真昼が喜んでたらそれはそれでおかしいんだけどな。
「それよりさ、このよだれを垂らして寝ている一ノ瀬さんはどうしましょーか」
そう。一ノ瀬は今俺のベッドでよだれを垂らしながら寝ている。なんというか、今までで一番の可愛さなんですけど。
「ちょっと頭を撫でてあげて」
「えっ?」
「だから、くるちゃんの頭撫でてあげて。寝てる時に頭撫でられたら、きっと嬉しいだろうから」
「いやいや、それってセクハラになったりしないの?俺ならとしか思えないんですけど」
いや、これに限っては俺正論じゃね?
「大丈夫だから。私が責任取るから、さっさと頭を撫でる」
俺は強制的に一ノ瀬の頭を撫でさせられた。
なんだこの生き物は。いつもは元気でとっても頼りになる一ノ瀬なのに、今はわんぱくな可愛い少女って感じだ。
こんな妹が欲しかった。
「んっ……あぁ……う……っ!京くん?!まっひー?!」
ようやく一ノ瀬は俺たちに気づいたらしい。
「雷……、苦手なのか?」
俺が優しく聞くと、コクリと一ノ瀬はうなずいた。
「実は小さい頃から苦手で。もしよかったら、これからも雷の日は一緒に寝てくれないかな?私、雷の日は一人じゃならなくてさ」
「そうだよね。雷の日は全員で一緒に寝よう」
都合のいい方向に進んだ真昼は、ここぞと言わんばかりに話す。
まぁ、別にいいか。俺は美少女二人と一緒になれるなんて、天国すぎるし。
そして、俺の意見は聞かれることなく、勝手に決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます