第76話 調子に乗りすぎた。

「う、嘘でしょ?そんな100点だなんて……。ほんとなの?」


俺は頷く。まだ、少しは疑ってるかもしれないが、村瀬たちは納得した。


「そ、それじゃあ、私に勉強教えてくれないかな?」


とても可愛らしい声で迫られた。


「わ、分かった。でも、毎日教えるのは無理なんだ。時間があるときには教えるけど」


承諾してしまった。


一応、真昼にも教えることになってるから、毎日教えるというのはできない。


ってか、今回のテスト、俺自分の勉強できないんじゃないのか?



そんなこんなで、勉強会がスタートした。


「まず聞いておきたいんだけど、中間テストは何点だった?」


俺が聞くと、村瀬は恥ずかしいのか何やらもじもしとしている。その光景はとても可愛かった。


「25点と31点……」


「25点と31点、だな?」


真昼も26点と32点でほとんど同じ点数だったので、あまり驚くことはなかった。


ということは、この期末で数学は45点以上、理科は39点以上か、まずは優先的に数学からだな。


俺はマンツーマンで村瀬に数学を教えることにした。


やり方は真昼と同じように先に説明をして、その知識で問題を解いて、それでもわからなかったら俺が教える、って感じだ。


村瀬も欠点がとても嫌なのか、俺には見せたことのない程真面目な顔をして勉強に励んでいる。 


こういった感じで真面目にしてるやつを見ると、俺も教えててよかったなと思う。


しかし、村瀬は本当に数学というものが苦手なんだろう。真昼は意外とすらすら解けていたが、村瀬はまだ苦戦しているようだった。


しかし、すぐに俺に聞こうとはせず、ずっと自分で考えている。


普通ならこの行為は褒めるべきなのだろう。しかし、今回においては、聞けるときに聞いておく方が正解だと思う。やはり、まだ俺はそこまで信頼されてないんだろうな。いや、そんなことはどうだっていい。今は村瀬の欠点回避の方が大切だ。


「愛月、俺はまだ頼りになってないかもしれないけど、もうちょっと俺のことを信じて質問してくれよ。絶対俺はどんなことがあっても愛月のことを見放したりはしないから。もっと俺を頼りにしてもいいんだ」


言った後に気づいたが、なんかラノベ主人公みたいなセリフ言ったかも。


しかも、村瀬何にも返してくれないし、俺やっちゃったか。ちょっと調子に乗りすぎなか。


「あっ、その、ちょっと調子に乗りすぎたというかなんというか……、あぁぁ……すいませんでした」


俺は一応パシリという存在なのに、やりすぎた。


「いやー、かっこいいこと言うじゃん。森木っち結構男らしいとかあるね。これなら、愛月も、あらら……」


そう言われて村瀬の方を見ると、村瀬はなぜか顔を真っ赤にして、俺を見てる。


「へっ?あ、そうだね。これからは頼りにさせてもらうよ」


村瀬は少し停止していたのか、少し驚いたような声を出した。まぁ、村瀬が俺を頼ってくれるならよかった。


「おう。あ、それならゲームをしよう。今回の期末テストの数学で、愛月が55点以上をとったら愛月の勝ち。55点未満なら俺の勝ち。それで、勝った方は負けた方になんでも一つ命令できる。どうだ?」


一ノ瀬の考えたゲームを俺も使わせてもらうことにした。


真昼もそのゲームを聞いてやる気出してたし。


「いいね。乗った。絶対にとってやる」


村瀬は見たことないぐらいやる気に満ち溢れていた。

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