第75話 赤点候補2
翌日、俺は村瀬たちに呼ばれているため、放課後、以前行ったカフェに入った。
入るともう村瀬たちはいたので、その場へ向かった。
俺が向かったのに、なぜか村瀬たちは立ち上がりこちらに向かってくる。
「森木っち行くよ!」
「えっ?どこに?」
「まぁまぁ、いいからついてきて」
俺の質問には答えず、ついてこいとだけ言ってくる。
もしや……、これからが本当のパシリというものなのか。前はパシられるっていうよりかは一緒に遊んだって感じだったしな。
それにしても……、テスト一週間前になっても遊びに行くとは、さすがはヤンキー。
その後も何度もどこに行くのか聞いたが、村瀬たちはまったく答えてくれず、ただひたすら歩いていく。俺はその後を追う。今回は横にいかなくても怒られずに済んで少しほっとした。
「ついたよー」
そこは、普通の一軒家。
ん?どういうことなのかな?
「ここって、ここ?この家?」
「そだよー。ここは、愛月の家だよー」
ほうほう……って、いやおかしいだろ!
なんで俺は家の前に来ているんだ?!
「何か忘れ物でもしたのか?」
まぁ、普通に考えればこれぐらいしかないか。
「違うよー。今日はここで勉強会だよ」
はああぁぁぁあぁぁぁぁああぁぁ?!
「いや、俺はなぜここに連れてこられたんだ?」
一般的に家に連れてこられたら、『入る』以外の選択肢はないのだが、今回に限って有り得ない。
大きな声では言いたくないなが、俺は一応パシリだ。
普通は家に入れるのって、仲のいい友達か彼氏とかだろ?
それなのに俺?何をするのだろうか。あっ、ジュース買ってこいとかかな。
「ちょっとここでは言いづらいから、ひとまず中に入ってよ」
家に歓迎されちゃったよ。どうなってんだ?
俺は村瀬たちに背中を押され、強制的に家の中へ入れられた。
そして、階段を上らされ、ある部屋に入れさせられた。おそらく村瀬の部屋だろう。
そこには……、正直ヤンキーとは180度逆の部屋だった。
ベッドの枕の隣にはクマのぬいぐるみが置かれていた。
なんか可愛いな。
そのほかにも、きちんと整理されていた。
正直、ヤンキーの部屋って、いろんなものが散乱しまくっているのを想像していた。
「みんな、ちょっといいかな?」
ベッドに座った村瀬がいつもと雰囲気が変わり、真面目な顔になった。
俺やギャルズも空気を読みしっかりと話を聞く体制をとった。
その反応を見て、村瀬は話し始めた。
「私なんだけど……、実は前回の中間テスト、数学と理科で赤点取っちゃったんだよね……」
気のせいだろうか。つい最近聞いたがするんだが。
「それでなんだけど……、もちろん追試なんてしたくなくて……、できれば誰か数学と理科を教えてください!」
そう言って頭を下げた。
正直驚いた。ヤンキーがこんなあっさり頭を下げるとは。
「ごめん、私も今回の数学は48点で教えれるほどできるわけじゃないんだよね……」
「「「私も……」」」
どうやら、このギャルズは皆中間テストの数学で50点を変えることができなかったらしい。
そして、みんなの視線が俺に集まる。
「森木っちは前の中間テスト何点だった?」
まずい……。この聞き方をされたら「100点」と言わなくてはならないじゃないか。聞かれたのが、「中間どうだった?」だったら「俺もかな」って言えたのに……。
…………はぁ。
「100点……」
「えっ?なんて?多分聞き間違えたからもう一回いって」
なんだこいつら。失礼だな。
「100点」
俺はさっきよりも少し大きな声で言った。絶対に全員が聞こえる声で。
「「「「「えっ、ええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」」」」」
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