第74話 数学
翌日になり、俺は初めて数学を人に教える。
正直、人に教えるということをしたことがないので、どう教えればいいのかもわからない。
やってみないとわからないか。
俺は授業中、真昼に教えるためにノートに要点をまとめていた。
今回の俺たちの範囲は、方程式、不等式、連立不等式、命題などの問題だ。
方程式や不等式はやり方を覚えれば間違いなく解けるだろう。
それに比べて命題を使った問題には、おそらく証明が関わってくるはずだ。
数学が得意な人でも証明が苦手だという人はかなり多い。
昨日真昼の点数を聞いたら数学は26点だった。
俺たちの学校の赤点は35点未満。そのため、中間テストと期末テストの合計で70点をとって、授業態度や提出物をしっかり出していれば、学期の欠点は回避できる。いえば追試がなくなる。
70点取ろうと思ったら、真昼は次の期末テストで44点以上をとらないとピンチだな。
おそらく、真昼には証明なんて理解できないはずだ。
それなら、いっそのこと証明を捨てるのも一つの策だな。
それで、はじめの方に出てくる簡単な問題を確実にとる。
うん。それが一番真昼にはいいかもしれないな。
俺は方針を決めて、公式とその公式を使った例題をまとめた。
放課後、一ノ瀬に買い物を任せて俺と真昼はすぐに帰って勉強を開始した。
「それじゃあ始めるか」
「うん。お願いします」
俺はファイルから授業中書いていたノートをちぎった。
「まずは一個ずつ説明するから、わからなくなったらすぐに止めてくれ。すぐに言ってくれた方が俺も真昼にしてもいいからな」
「わかった」
「方程式はわかるとして、例外もあるけど不等式も同じように計算できるんだ」
「っ、ほうほう……、一回やってみるよ」
真昼はワークの問題を解き始めた。
俺はそれを見ながら間違ってるところがあれば教える。という形でいくことにした。
真昼は黙々と手を動かす。
ん……?なんで簡単な不等式なのに5行目まで行ってるんだ?って!途中式無茶苦茶じゃねーか!
「ま……ひ……る?」
俺は優しく聞いた。
「京くん……、全然わからない……」
そう言って真昼は捨てられた子犬のような顔でこちらを向いてきた。
ものすごくドキッとした。あまりにも可愛すぎる。
最初に隣人としてあったときはめちゃくちゃ美人で大学生ぐらいだと思ってたけど、今見てみると結構可愛い部分もあってどちらかと言えば小学生、中学生を相手にしている感じになる。でも、身体はしっかりと成長していて、出るとこも出ていて、一緒にいるとドキドキする。
「そ、そうか。それじゃあ方程式からやっていこうか。心配するな、真昼を欠点になんてさせねーよ。50点ぐらいは絶対とらせてやるからな」
「うん!ありがと!」
ドキッ!
やばい……。今日の真昼がめちゃくちゃ可愛いすぎる……。もしかして、これって……恋?
いや、ないな。俺が真昼のことを好きなるなんて、まさかな。
それより今は真昼の数学だな。
俺は切り替えて真昼に方程式から教えた。
「ほうほう……」 「なるほど!」
この声を聞くたび、心のどこかがドキドキしている。
でも、俺には一ノ瀬がいる。そう言い聞かせ、自分を取り戻した。
そして、1時間ほどかけて方程式、不等式の説明を終え、今はワークの問題に挑戦している。
解いてる途中で分からなくなったたら教えるということにした。
流石に俺もテスト前だし提出物だけでも終わらせなくちゃな。
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