第73話 1位
「1位ってどういうこと?そんな嘘つかなくてもいいのに」
私の思考が停止した。
どういうこと?数学が学年で一位?そんなはずがない。だって京くんは学年で90位ぐらいなんだよ。一つの科目でも1位とるような人が総合で90位になるはずない。そう、これは間違いなく嘘をついている。それで、私をからかっているつもりなんだろう。
「いや、ほんとだって。見せてやろーか?」
どういうこと?本当なの?いや、そう言ってリアリティをあげてるに違いない。
私は頷く。
すると、京くんはファイルを取り出し何かを探している。間違いなく中間テストの成績表だろう。
すこししたら見つけたのか、ファイルから取り出して私に渡してくる。何やらニヤニヤしている。
本当に1位だっていうの?!いや、そんなはずない。そ、そうだ、きっとここでネタバラシされるんだろう。そ、そうだよね……?
私は京くんから成績表を受け取り、恐る恐る目線を下す。絶対嘘絶対嘘絶対嘘絶対嘘絶対嘘絶対嘘絶対嘘絶対嘘絶対…………。
「うそっ……」
「どんなもんだ」
京くんは何一つ嘘をついてはいなかった。
総合順位93位、そして、数学は……1位……。
まさか本当だというのか?総合順位93位の男が数学で学年1位だと。
しかも、さりげなく理科も学年6位じゃん!私7位なんですけど!
私はあんな大口を叩いていたのに、二科目も負けていた……。なんと恥ずかしいことだろうか。
「でも、なんでこんな高順位なのに学年93位なの?」
私は視線をプリントから京くんに向ける。
「他の教科見てみな。見ればわかるよ」
私は言われた通り視線を落とし、他の教科も確認する。
「あ、なるほどね……」
私は一瞬で理解した。
国語35点396位、英語42点351位、社会49点358位。
なるほど……。京くんは理系は完璧だが文系科目に関しては壊滅的なのか……。
国語なんて本当に赤点ギリギリじゃんか。
「わかったか?」
「うんわかった。京くんが文系科目が壊滅的だということが」
「いや、理系を褒めろよ。学年1位だぞ」
「そうだね。確かにすごいよ。だって100点なんだもん。たしかこのテストに90点台の人はいなくて、2位の子だって80点台なんだよ?凄すぎるよ。私なんて79点だし」
そう。中間テストの数学はとても難しかった。ワークを何度も解き直したけど結果はこの様だった。でも学年で9位だったから自分で満足していた。今ではそんな自分がバカらしい。
「いやいやあのテストで79点はかなりすごいんじゃないか?」
京くんはすこし嫌味な感じで言ってきた。
「そうだね。普通なら言われて嬉しいんだけど、京くんに言われたら怒りしか生まれない。なーんてね。でも次のテスト、数学だけは100点とると今決めた」
かなりの負けず嫌いな私はものすごくやる気に溢れていた。
「ははは、頑張りたまえ」
総合では余裕で勝っているのに、数学を見ればボロ負けだ。絶対に勝ってやる。
「あの……」
私と京くんが話している中、まっひーが口を開いた。私と京くんは視線を向ける。
「あのさ京くん、無理ならいいんだけど、私に数学と理科教えてくれないかな。知ってると思うけど私本気で理系科目がやばすぎてさ。もしよければ、教えてください」
まっひーは真剣に頭を下げた。
「そうだよ。ちょうどハンデにもなるしいいんじゃないかな。ってわけで京くんには拒否権はないからね」
「まぁ、俺でよければ全然教えるけど、俺、人に教えたことなんて何からな」
「大丈夫。学年1位と9位の友達がいるんだよ。自信出てくる」
なんかいろいろあるけど、この2人の関係も少しずつ前進してるのかな。
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