テスト編
第72話 赤点候補1
6月も後半に入ってきたある日、俺たち生徒は先生からある連絡をされた。
「今日からテスト一週間前だ。みんなぼちぼちテスト勉強を始めてると思うが、この期末テスト終われば夏休みに入る。夏休み前にしっかり頑張ろう。それと、中間テストで赤点を取ってしまったものは、この期末テストで挽回しないと夏休み学校に来て追試になるから頑張るように。」
この『追試』という言葉を聞いた後、クラスの数名の方がビクッとなる。
おそらく、中間テストで欠点を取ってしまったのだろう。
そして、俺の隣にも肩が動いていた奴がいる。
なるほどな……。俺は察した。
そして放課後になり、いつも通り俺の部屋に集まる。
いつもならおしゃべりなどをしているのだが、今日は違う。みんなテスト勉強に励んでいる。
「そういえばさ、みんなは中間テストどうだったの?」
集中力が切れたのか単に勉強がしたくなくなったからか、真昼が話し始めた。
その話題に乗ったのは、一ノ瀬だった。きっと、自分の成績を自慢したいのだろう。
「私は前の中間テストは、学年で2位だったよ」
「まじかよ!天才じゃねーか」
こんなことを言ったが、落ち着いて考えると納得できる。以前、一ノ瀬は毎日勉強していると言っていた。そりゃあ、それぐらいとるわな、ははは……。
そして一ノ瀬は、ドヤッと胸を張る。
そんな一ノ瀬も可愛い。
「京くんはどうだったの?」
そして、バカにしたような顔で一ノ瀬が聞いてきた。その横で、なぜか目を輝かせている真昼……。
「まぁ、学年で90位ぐらいかな」
「えっ」
「へー、意外と京くんも勉強できるんだね。まぁ、私には及ばないけど」
一ノ瀬はまたしてもドヤ顔で俺を見下す。
なんか、どこからか驚きの声があった気もするが一旦置いておこう。
「まぁ、けっこう得意科目と苦手科目の差があるんだけどな」
「なるほどね……。まっひーは?」
俺たちが真昼の方を見ると、半泣き状態の真昼がいた。どうせ、俺がもっとバカとでも思っていたのだろう。
「392位……」
「「えっ?」」
真昼の声があまりにも小さすぎて、おそらく聞き間違いであろう順位に聞こえた。
俺と一ノ瀬は聞き直す。
真昼は、何やらもじもじしていて、本格的に泣きそうになっていた。
「392位!400人中392位です!」
真昼の目からは涙が垂れており、意地になったように叫んだ。俺にも一ノ瀬にも聞こえる声で。
まじか……。赤点をとっているんだろうなとは思っていたが、さすがに予想をはるかに超えていた。
学校一の美少女が、勉学の面では下から9番目。
そりゃあ泣きたくもなるわな。
「そ、そうか、それじゃあ次のテストは頑張らないとな。ちなみに、何の教科で赤点とったんだ?言いたくなかったらいいんだけど」
「数学と理科……。英語も赤点ギリギリ回避だった」
なるほど……。理系科目が壊滅的だということがこの言葉で分かった。
この場が、すこし重い空気になる。
そんな中、一ノ瀬はいつも通りのトーンで話し出した。
「大丈夫だよ!まだ、一学期の中間テストがダメだっただけだよ。これからちょっとずつ上げていけばいいんだよ。私も京くんもまっひーに勉強教えるからさ」
一ノ瀬は俺に確認も取らず黙々と話し続ける。
「そうだ!それじゃあ、このテスト頑張って350位以内にあげようよ!目標があった方がいいって聞いたことあるし。そうだ!もし、まっひーが350位以内に入れたら、京くんになんでも命令できるってことで!」
おい!さすがにそれは確認取らなきゃダメなやつだろ!
俺はそれを言おうとしてやめた。なぜか、真昼がものすごくやる気になっていたからだ。お前もなんでそんなことでやる気出してんだよ。
まぁ、真昼にやる気が出るならこれぐらい、いいけど。
「よし、頑張るぞー!」
真昼は再び目線を机に戻す。
その数分後、口を開いたのは一ノ瀬だった。
「そうだ京くん。どうせだし私たちも何か勝負しようよ」
「別にいいけど……、勝負の内容は?」
「ん……、そうだなぁ……、それじゃあ、京くんがなんの教科でもいいから私に勝ったら京くんの勝ちってことで。もちろん、勝った方は負けた方になんでも命令権で。ちなみに言っておくと、私この中間テスト、全教科10位以内だからだね。はっはっはー」
俺はこの勝負の勝利を確信した。
「もうルール変更はなしな」
「もちろん!」
「それじゃあ数学で」
「特別に、テスト終わってから一番高かったやつでもいいんだよ?」
忠告をしてくれたが、俺には教科を変える必要はない。
「いいや、数学でいいや。絶対勝てるし」
「何その自信、ちょっと怖いんですけどー。学年8位の私を前にしてよく言えたものだな。一応聞いといてあげよう。君は中間テストの数学、学年で何位だったんだい?」
「1位」
「えっ?」
そう。俺は、文系科目においては50点もいかないが、理系科目、特に数学に関しては、中学の時から1位を譲ったことがない。
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