第71話 合鍵

今日は日曜日。今までの俺なら、日曜日という日は家から一歩も出ない日だった。しかし、先週は隣町のショッピングモールへ行き、今日は鍵屋に来ている。


これには理由がある。俺たちの部屋の合鍵を作ろうということになった。



先週の火曜日の朝、いつも通り俺たちは一緒に登校していた。


「そういえば京くん、昨日なんだけどさ、ご飯作ろうと思ってたんだけど、京くんの部屋には入れなかったんだよね。京くんの部屋にほとんどのキッチングッズを置いてたから結局作れなかったんだ。だから、昨日はMドナルドで食べたんだー。これからもそんなことがあると思うけど、どうしよっか」


Mドナルドと聞いたときはヒヤッとした。俺たちの行く時間がずれていたら一ノ瀬たちと鉢合わせていたところだったな。


パシリだということは絶対に隠し通さねばならないからな。


「そうだな、俺も予定がある日は絶対にあるだろうから、何か対策を立てないとな。その日をずっと外食にするってわけにもいかないし」


3人は歩きながら悩んでいた。その沈黙から口を開いたのは真昼だった。


「それじゃあさ、合鍵作ったらいいんじゃない?」


「たしかに、その発想はなかったな。そうすれば、いつでも全員俺の部屋に入れるしな」


「そうだね。合鍵を作るってのは私も賛成かな。一人暮らしの時とかは突然倒れたりしても気付かれないケースが多いからね。そうなった時にすぐ見つけれられるようにしておくのはいいかも」


一ノ瀬の意見を聞いて、改めて合鍵制度に賛成の気持ちになり、俺は頷く。


その反応を見て一ノ瀬が続ける。


「それじゃあ、次の日曜日にでも行こうよ。たしか、鍵屋さんが私たちの家の近くにあったはずだし」


「そうだな、どうせ作るなら早い方がいいしな。よし、それじゃあ日曜にでも行くか」



そのようなことがあり、俺たちは自分の部屋の鍵を持って鍵屋に来た。


まぁ、鍵屋に来る以前に一人暮らしなら外出する際、鍵を持っていくのが普通なんだがな。


鍵屋についた俺たちは、すぐさま合鍵の作成を依頼した。


もちろん、大家さんには許可を得た。


依頼したところ、1時間から2時間程度でできると言われたので、一度鍵屋を出ることにした。


鍵を預けているため、家に帰れない俺たちは先日村瀬たちと行ったカフェに入った。


入る際、村瀬たちがいるのではと少し焦りの気持ちもあったが、幸いなことに村瀬たちなど知っている人はいなかった。


カフェに入り、ドリンクを注文し終え、その数分後にはドリンクが届いた。


その後、1時間半ほどだろうか、俺たちはおしゃべりをしたりスマホをいじったりして時間を潰した。


その後、鍵屋に戻ると合鍵はもう出来上がっていた。


俺たちはそれぞれ3つずつ(俺と一ノ瀬と真昼の部屋の)鍵を受け取った。


そうか……、これからは鍵を3つ持っておかないといけないのか。


でも、美少女の部屋の鍵だぞ。100万出してもゲットできるようなものじゃないぞ。これは大事に保管しておこう。


鍵を受け取った俺たちは、全員俺の部屋をと入っていく。


はじめは女子が自分の部屋に入るというだけで緊張していたが、最近ではそんな感情は無くなっていた。


最近では、俺の部屋はリビングのような扱いになっている。


2人も俺のベッドやらにくつろいでいる。俺はその隅でラノベを黙読している。


そして、夜になると代表者1名が料理をして、それを3人で食べる。


変わったことといえば、俺の部屋の冷蔵庫にいろいろな食材が置かれるようになったことだろうか。毎日買い物に行くのがめんどくさいという理由からこうなった。


そうして、軽く半同居の1日が終わっていく。

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