第70話 パシリ初日

「それで……、2人とはどういう関係なのかな?前聞いたときは無関係って聞いた気がするんだけど」


俺たちは今、学校から徒歩10分ほどのカフェに来ている。


もちろん、昨日のことについて聞かれていた。


「昨日デートしてたのは一ノ瀬さんと宮下さんだよね?なんで君みたいな子が学校の美女2人とデートしてたの?」


ギャルズの髪が青色に染められたやつが聞いてきた。名前は谷川 伊織(たにかわ いおり)。おい!流石に『君みたいな子』はひどくない?!俺も一ノ瀬とお出かけするぐらいの権利はあるだろ!


「いや、別にデートってわけじゃないんだけど」


「じゃあなんなの?幼馴染だったとか家が近いとか?」


「まぁ、そんな感じだ」


すげぇな。完璧じゃねーか。


「なんか、適当に話を逸らされた気がするんですけどー」


「いや、完璧にあってるんだけど……」


「まじで?」


俺は頷く。


「まじで?やばいね。2人とも幼馴染なんだー。すっごい幸運の持ち主だな君は」


「いや、幼馴染なのは真昼だけで」


「ん?一ノ瀬さんも家が近いなら幼馴染になるんじゃ?」


「ん……、それはあの……、ん……」


どうしよう……。一ノ瀬のことはどう説明すればいいのだろうか。


郷田には言ってもいいと思ったが、こいつらには言っても大丈夫だろうか。


「悪い。ちょっと個人情報になってしまうから言えない」


「そっか、それじゃあ仕方がないね。でもだよ、仮にご近所さんだったとして、普通同じ学校同じクラスの男女が隣町のショッピングモールに一緒に行く?」


たしかに、俺もそれ思った。ラノベとかでも、お出かけに誘うやつはその相手のことが好きなんだよな……。


たしかこのお出かけの発案者って……、っ!もしや、やっぱり一ノ瀬は俺のことが……。いや、昨日、そんな感情はないって言われたところだったな。で、でも、恥ずかしくて正直に言えないタイプの子なのかも!


はぁ、現実にそんなこと考え出したら終わりだよなぁ。はぁ。


「荷物運びにでもされたんじゃないか。実際荷物めっちゃ持たされたし」


「そうだよね。その可能性が大だね。てっきり、2人が森木っちのことを好きなのかと思っちゃったよー」


おい!さっきからちょくちょくぶっ刺してくるのやめろ!


もう体がもたない。もっと優しく接してー。


「お、おう。それじゃあ、話も終わったことだし今日はお開きか?」


「まさか。今からゲーセンにでも行こうよ。せっかく森木っちもあるんだし、今日は朝まで寝かせないぜ」


どうしても最後の言葉には変なことを考えてしまったが、ゲーセンという言葉にもどり、落ち着く。


「はいはい」


俺はこいつらの隣を歩く。



この後、2時間ほどゲーセンに付き合わされた。


なんか、エアホッケーのトーナメント戦など、意外と楽しんでしまった自分がいた。


パシリとは言っているが、実際一度もパシられてはいない。普通に一緒に遊んだという感じだ。


その後もMドナルドで晩飯も共にした。


俺は9時ごろに家に帰ってきた。朝まで寝かせないと言っていたやつは誰だっけか。


思い出してつい笑ってしまった。


よし、ラノベでも読むか。


俺はラノベを手に取った。

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