第68話 友達ができました。

郷田は、俺の話を黙って聞いてくれた。


約束をしたとはいえ、途中で殴られると思っていたので、逆に殴られなくて変な感じだ。


「ほんと……なんだよな?」


「あぁ、今言ったことに嘘はない。誓おう」


郷田は俺の目を見て、納得したようだった。


「いや、めちゃくちゃ羨ましいな。俺にもそんな美少女の幼馴染が欲しかったなー」


なんだか、今日の郷田はかなり機嫌がいいのだろうか、ものすごく声が優しい。


俺が勘違いしてただけで、こいつ本当はいい奴なのかもしれないな。


「正直、ここだけの秘密だが、今の真昼は真面目!みたいなイメージあるかもしれないけど、昔は俺と同じく、アニオタだったんだぞ」


「まじかよ!あの宮下さんが?!」


俺は頷く。俺も昔と現在が違いすぎて気づいたのは最近だったからな。


「なんか、郷田ってもっとヤンキーみたいな奴だと思ってたよ。意外と郷田とは話しやすいな」


「そうか?それは良かった。俺も、この学校に来てからはお前が一番話してるかもしれないな。何かの縁だ。ライン交換しようぜ」


「おう。ぜひ」


俺は郷田とラインを交換した。


ようやく、俺のラインに父親以外で男の名前が記された。


もしかして……、俺の友人キャラって郷田のこと?


「これからも宮下さんや一ノ瀬さんのこといろいろ教えてくれよ」


「おぬし、それが本当の目的か?」


郷田はわざとらしく口を塞ぐ。


その後、向き合って笑う。


本当にいい友達ができた。友達と一緒に弁当を食べるなんていつぶりだろうか。いや、友達と食べたことあったっけ。


友達と一緒に弁当食べるのって、こんなにも弁当が美味しく感じるんだな。いや、これは単に一ノ瀬の作った弁当がうまかっただけなのかも。


"キーンコーンカーンコーン"


「もう鳴ったのか。やばっ!まだ弁当最後まで食い終わってねえ」


「早く食えよ。待っといてやるから」


俺は口の中に詰め込んだ。


それにしても、めちゃくちゃうまい。将来弁当屋でも開いたら絶対成功すると思うけどな。


俺は一ノ瀬の弁当を米粒一つ残さず食べた。


予鈴がもう鳴っている。しかし、幸いなことにこの学校の予鈴は10分前なので、そこまでやばいというわけではない。


俺と郷田は弁当箱と水筒を持ち、階段を上っていく。


「一ノ瀬さんの作った弁当うまかったか?」


階段を上っている時間も雑談をした。


「それはもううますぎて舌が溶けそうだったわ」


「なんでうまかったら舌が溶けるんだよ。普通ほっぺが落ちるとかだろ」


こんなにくだらないことでも笑うことができる。


友達っていいもんだな。


教室に戻ると、俺は先に一ノ瀬の元に行った。


今日一緒に帰れないから弁当箱を渡しておくのと、一応初めてだし感想をな。


俺が一ノ瀬の方に向かうと、一ノ瀬はそれに気づいたのだろう。


わざわざ友達と話してたのに、こっちに来てくれた。


「悪いな。これ、今日一緒に帰れないから先に渡しておこうと思って」


「あ、うん」


俺は弁当箱を渡して、


「あ、それと、とってもおいしかった。ごちそうさまでした」


「それはよかった」


一ノ瀬は笑顔で言った。なんとまあ可愛らしい顔。


予鈴も鳴っているので、俺は先に着いた。


5時間目と6時間目の間の休み時間も郷田と時間いっぱいまで喋った。


人生で初めて男友達ができました。

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