第63話 映画
パンケーキ屋から出た俺たちは映画館へと向かっていた。
「それにしても……、突然京くんがお金出すとか言い出したからとっても驚いたよ」
そう。俺はパンケーキ屋で、「全部俺が払う」と言った。でも、これが常識なんだと思っていたんだ。
そのため、とても恥をかいてしまった。
「いや、テレビとかで『男女の食事は男が支払う』って聞いた記憶があってさ……」
「いや、いつの時代のテレビだよ。今はほとんど割り勘とかじゃないかな」
「いや、俺そんなこと全然知らなくてさ……」
「まぁ、奢ってくれるなら全然良かったんだけどね」
一ノ瀬がニヤリと笑顔で言う。
「いや、そんな常識がないなら、払うわけないだろ」
「実は、今言っていたことは全部嘘で……、ホントウハオトコノヒトガゼンブハラウンダヨネ……」
「騙されるか」
そんなバカな話をしながら俺たちは映画館に向かう。
今になって思うが、最近はこいつらなら緊張せずに話したりできるようになったな。成長したな。
映画館についた俺たちは、なんの映画を観るかを悩んでいた。
「俺はなんでもいいから、好きなのを選んでくれ」
一応見たいやつがあると言えばあるのだが……、それはアニメだ。
昔オタクだった真昼ならともかく、絶対アニメとか見たことなさそうな一ノ瀬を無理やり連れて行ってみたところで、嫌われて終わりだろう。
それなら、ここは我慢して一ノ瀬の行きたいところに行った方がポイント稼げるかもとか考えていた。
「それじゃあこれ見ようよ」
「おう、いいぞ……ってなんでこれなんだ?!」
俺はどうせ海外の映画か何かかと思っていた……のだが、まさかの恋愛系だった。
完全に予想外すぎて突っ込んでしまった。
「えっ、なんでもいいって言ったじゃん」
まぁ、確かにそれはそうなんですけどぉ……、普通男と恋愛系観に行きます?!普通の男子なら『この子、俺に気があるのかな?』とか考えちゃうんですよ。
今回は2人きりじゃないからそんなことはないとはいえ、普通好きでもない人と恋愛系の映画見に行きます?!
「そうだけど……、わざわざ男連れてこれ観たいか?」
「いや、私男がどうとか考えない感じの人間だから安心して。それと、付け加えておくと、私は京くんに対して特別な感情はないからね」
あぁ、なんと言うことだぁ……。
なんかあっさり振られてしまった。
俺はどんな気持ちでこの映画を見ればいいのだろうか。
真昼がいたとしても、間接的ではあるが振られた女どんな恋愛映画なんか観てどうしろと?!
「それじゃあこれにするか」
もう、なんでもいいや。
2人はこくりとうなずく。
そして、俺たちはチケットを買い、ちょうど時間が良かったため、そのまま上映場所まで移動する。
そして、いい感じに見やすいところに、一ノ瀬、真昼、俺の順で並んだ。なんで俺と一ノ瀬が隣じゃないんだよ!
それにしても落ち着かない……。
なぜなら、この周辺には、イチャイチャするカップルか、女子軍団しかいない。
正直、俺がいるのは明らかにおかしい。
そう思いながらも席についてるうちに、上映中の注意事項の映像が流れ始めた。
そろそろか……。
映画の始まる直前、いや、若干始まり出した時にある女子集団が俺の横に空いた五つの席に座り始めた。
若干横目で見た感じでは……、ギャルだなこいつら。
「ふぅ、ギリギリ間に合ったねー」
おい!映画始まってんぞー。非常識だな。
これでは周りの人にも迷惑になる。
こうなったら俺が注意するしかないな!なんてできるわけないが、一応顔ぐらいは見ておこう。
俺はゆっくり横を向いた。
っ、嘘だろ?!
俺は向いている顔をすぐさま戻し、若干真昼が見えるぐらいまで向いた。
こいつはやばいことになったな……。
横にいたのは、俺とパシリ条約を交わした村瀬率いるレインボーギャルズだった。
そうか、今日何度か見たことある奴いたような気がしていたのはこいつらか!
そんなことより、こいつらに一ノ瀬や真昼と出かけてるなんで見つかったらただじゃすまない。
絶対に隠し通してみせる!
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