第54話 体育祭終了

真昼との約束を終えた俺たちはクラスの待機場所に戻り、クラスの活躍を見ていた。


別に応援とかをしていたわけではないが。


特にすることもないので暇な時間が続いた。


そして、1時間くらい経っただろうか。


最後の種目であるリレーに出る選手が招集された。


俺や真昼などのリレーメンバー20人が入場門へ向かった。


「京くんどう?緊張してる?」


道中一ノ瀬が話しかけてきた。


「まぁな。でも、頑張ってきたし、ちょっとは自信あるかな」


その返事に一ノ瀬は感心したように頷いた。


「いや……、走ってる時にこけたりしないかな?」


しかし、隣には弱音を吐く奴がいた。


「大丈夫だよ。まっひーも最初に比べたらとっても成長したんだよ。自信持って大丈夫だよ」


すぐに一ノ瀬はフォローにまわる。


さすがに『最初に比べたら』って全然人並みにはなってないって遠回しに言ってないか?


こんなこと言ったらますます真昼は自信なくすんじゃ……。


「そうだよね。私頑張ってきたもんね。うん。自信出てきた。くるちゃんありがと」


そうだった……。馬鹿だった……。


初めて馬鹿でよかったと思った。


この最終種目は体育祭の最後にふさわしくなっている。


このリレーは、一試合で10クラスが戦う。


そして、一位のクラスには100点も入るので、毎年このリレーが一番盛り上がるらしい。


さて、俺たちの作戦『前に速い奴作戦』は成功するのか。


”パンッ!”


最後の戦いが始まった。


最初の走者は必ず女子が走ることになっている。


どのクラスも先頭は速い奴を導入しているはずだが……、我がクラスの小坂の力によりものすごく遅く見えてしまう。


その後も、差はだんだん広げていき、10人目が終わった頃には半周ぐらい差があった。


しかし、俺たちは全く余裕の表情は見せない。


そう。これから俺たちはだんだん遅くなっていくかだ。


それに比べて他のクラスは基本的に後ろに早い奴が多い。


予想通りだんだん近づいていく。


半周あった差が今では残り10メートル……。


これってかなりやばいんじゃ……。


バトンは真昼に渡り、真昼は逃げる。


真昼に渡ったということは、残り4人。


俺たちのクラスで言えば、真昼、俺、一ノ瀬、大野だ。


その中で遅いのは俺と真昼。


俺たちがリードして一ノ瀬にバトンを渡すことができれば勝利の確率はかなり高い。


この10メートルの差を守り抜くんだ!


やはり、成長の少なかった真昼はだんだんその差を縮めていく。


そして、バトンは真昼から俺に。


俺にバトンが渡された時には半周あった差も3メートルほどまで縮まっていた。


これはかなりやばいな……。


さすがに3メートルの差を守ることができるとは思っていなかった。


しかし、努力は実った。


俺は縮められることはなかった。


そして、一ノ瀬にバトンを渡す。


そのまま一ノ瀬、大野で余裕でゴールした。


我が3組はこの戦いに勝利した。


クラスの中でも歓喜だった。



二、三年生の試合も終わり、結果発表になっていた。


「結果発表をします。第3位……赤団!782点!」


えっ?まさかの最下位?おーーーーーい!


俺たちのクラス結構勝ってなかったか?


勝ってた気がするんだけどな。


「第2位……黄団!965点!第1位は……青団!1083点!おめでとうございます」


あ、ぼろ負けですか……。


一位と300点差はえぐいでしょ。


そのあと聞いた話によれば、合計点の差が300点もあったのはこの学校創立以来初めてのことらしい。


まぁ、これも一つの思い出か。


こうして、ある意味歴史に残る体育祭となった。



「京くん……、ハチマキ交換しよ」


「おう、いいぞ」


体育祭が終わった後、約束通り俺と真昼は、恋の噂もあるハチマキを交換した。


まぁ、俺と真昼が付き合ったりするわけもないし、恋の噂とかは考える必要ないか。


「帰るか」


「そうだね。くるちゃんも帰ろうよ」


「あ、ごめん。今日はこの後ちょっと忙しくてさ。来週からはこんなことないから、今日はちょっと。ごめんね」


珍しく一ノ瀬が俺の部屋で飯を食べないと言った。


そんなに大事な予定でもあったんだな。


「わかった。それじゃあ真昼帰るか」


「うん」


俺たちはそれぞれ交換したハチマキをカバンに入れて、学校を出た。

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