第42話 朝練初日

月曜日の朝、俺は真昼と一緒に登校している。


なぜなら日曜日、俺に一通のラインが来た。


『明日から一緒に学校に行かない?』


そこには、この文字が。


ラノベとかなら、このラインを送って来た奴は、その送った相手のことが好きなのだ。


一見、美少女もいるし、俺ってラノベの主人公なんじゃね?って考えてしまう。


しかし、ラノベと現実は違う。


こんな可愛い奴が、俺のことを好きなはずがない。


たまたま隣人だから、少し絡むぐらいなだけだ。


想像するだけ無駄だ。


『別にいいけど、突然どうしたんだ?』


もちろんオッケーなのだが、ここでいきなりオッケーだというと、なんか引かれるかもしれないので、理由を聞きつつオッケーを出した。


『くるちゃんが一緒に行った方がいいんじゃないかって。一緒なら遅刻もしないだろうからって』


やはり、あいつか。


しかも、それらしき理由をつけるから、断りにくい。


まぁ、断るつもりはないが。


『わかった。それなら7時30分に誘いに行く。それでいいか?』


朝練の時間は、クラスラインで一ノ瀬が『7時50分開始』と送っていた。


開始時間と登校時間を考えて、7時30分に行くことにした。


行くなら、もちろん遅れたくない。


クラスの中でも人気な奴らが少し遅刻しても笑われて終わりだが、俺みたいな奴が遅れると、全員から冷たい目で見られる。


これは全て実体験である。


『わかった。待ってるね』


こうして一緒に行くことになったのだ。


想像以上にきつかったのが、朝起きることだった。


いつもならまだ寝ているような時間に部屋を出る。


これが本当にきつかった。


今一緒に登校しているが、全く頭が働かない。


その結果、会話は弾まず、あくびだけが口から出る。


「京くん眠たそうだね。徹夜で本でも読んでたの?」


「いや、昨日もいつも通り、12時には寝た。今眠いのは、朝起きるのが早くなったからじゃないかな。これがこれから毎日…。想像するだけで、死にそうだ」


真昼は、冗談だと思っているんだろうけど、冗談ではなく本心ですからね。


そんなことを話していると、学校に着いた。


グランドに向かうとそこには俺たちのクラスの生徒が10人ほどいた。


そこには、我らの学級委員長、一ノ瀬 来未の姿も。


「まっひーおはよー!京くんもおはよ」


「ああ、おはよ」


一ノ瀬がニヤついている。


どうせ、(うわー、本当に一緒に登校するんだー、おもしろー)とか思ってるんだろうな。


(………とか考えてるんだろうな。私はこの二人を見て楽しんでるだけのやつだと思われてるんだろうな。まぁ、間違ってはないけど。でも、実は恋のキューピッドなんだよなー)


俺は制服の中に体操服を着ていたので、制服を脱ぐ。


そして、動ける服装になっておく。


10分ほどすると、クラスの8割以上の生徒が集まった。


「それで、今日はなんの練習をするんだい?」


クラスの副委員長の大野が一ノ瀬に聞いた。


「そうなんだよね…、リレーの練習をしようと思ってたんだけど…、今考えてみると、順番とか全く決めてなかったんだよね…」


一ノ瀬にしては珍しく、ミスをしていた。


「それなら、順番とかは今日決めて、リレーの練習は明日からでいいんじゃないかな?それで今日は、各自の競技の練習をするってのはどうかな?」


「それが一番いいけど…、リレーをなくしたら練習する種目のない人もいるしね…」


そうだ!それは俺だ!


俺は、玉入れと二人三脚、そしてリレーに出場する。


二人三脚の練習は一ノ瀬にやめておくように言われてるし、リレーがなくなったらどうしろと?


玉入れか?玉入れの練習をすればいいのか?


玉入れの練習ってなんだ?キャッチボールでもしておけばいいのか?


俺はなぜ今日ここに来た?


来る必要はあったのだろうか?


少しムカつく。


そりゃーそうだろ、せっかく早起きして来たのに、することがないなんて。


一ノ瀬らは何やら話していた。


そして、一ノ瀬はクラス代表として、話し始めた。


「みんなごめん。私の不注意で、リレーの順番を決めるのを忘れていたの。本当に今日は悪いんだけど、朝練は中止にして、教室でリレーの順番を決めようと思うんだけど…、どうかな?」


一ノ瀬は謝罪した。


さすがに、ここまでされると、誰も何も言えない。


しかも、順番を決めるなら、俺は暇じゃないし。


結局、その日はリレーの順番決めになった。


このリレーは、男女それぞれ10人ずつ走る。


一人100メートルだ。


俺たちのクラスのリレーの順番決めは男女別々に決めることになった。


好きな子の前後になりたいなど、話が進まなくなると判断した一ノ瀬の意見だ。


そして、俺たち男子は話し始める。


しかし、俺に話す権利はない。


一部のやつが決めていく。話を聞いていると、どうやら男子の考えでは、はじめの方に早いやつを置き、そこでリードを稼ぐ作戦のようだ。


その結果、俺は18番目の走者に任命された。


そして、女子も決まったようで名前の書いた紙を見せ合う。


俺は18番目だから、17番目と19番目は……、


『17番目、宮下 真昼、19番目、一ノ瀬 来未』


そう書かれていたんですけど…。


どうやら、女子もはじめの方に速い子を置き、最後にはクラスで一番速いやつをおくという考えのようだ。


こうして、俺は真昼からバトンをもらい、一ノ瀬にバトンを渡す役目となった。


なんか、本当にラノベみたいになってるんですけど、これって現実だよね?ラノベじゃないよね?


本当に考えてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る