第30話 一ノ瀬 来未
私は、小学校からアニメや漫画、ライトノベルが好きだった。
でも小学五年生の時ぐらいに私はオタクだといじめられていた。
その影響もあってか、小学校を卒業するとともにオタクを卒業した。
オタクを卒業することは簡単そうに見えて信じられないほど辛い。
何度オタクに戻ろうと思ったことか。
数えきれない。
中学校に入っても、小学校が同じだった子がたくさんいたため、何度も「こいつオタクなんだよ」と言われた。
正直何度も家に帰って泣いた。
でも私はやると決めたらとことんやる女。
そう何度も自分に言い聞かせた。
その結果、中学二年生になった頃には自然と悪口を言われるのがなくなった。
私はそのためにとても努力をしただろう。
今考えただけでも誇れるレベルだ。
まずは今までラノベなどの購入に使っていたお金をその当時人気だった雑誌などを買って、ヨウキャの研究をした。
そして、その雑誌に載っているような服やカバンなどを購入。
そこまでは真似するだけで簡単だったのだが、髪型を変えるのにはとても勇気が必要だった。
もともと私の前髪は目を隠せるほど長かった。
オタクの時は誰とも目を合わせることができないのでよかった。
でも、変わるんだ。
私は前髪をバッサリと切った。
切るまでは良かったものの、怖くて鏡を見れなかった。
自分の顔を見るのが怖い。
次はこの髪型でバカにされたりするのが怖い。
不登校になることを考える自分がいた。
恐る恐る鏡の方へ顔を向ける。
「あ、可愛い…」
この瞬間、私の中にあったものが弾けた気がした。
もしこれで似合っていなければ、本当に不登校になっていたのかもしれない。
しかし、私は意外と美形だった。
自分を褒めるのだから、かなりのものだ。
その時は前髪を切っただけだった。
そもそも私の髪型は髪が肩につくかどうかぐらいの長さで他に切るところは特にない。
まぁ、今では髪も伸びたけどね。
翌日、やはり学校へ行くのは緊張した。
教室の前で、ふぅー、はぁ、と深呼吸をしてから入った。
教室の扉を開けると、みんながこっちを見る。
私の心臓の音がとても大きく聞こえる。
「一ノ瀬…さん?」
その言葉をかけてきたのは、このクラスの女子のカーストトップだった天道さんだ。
「うん…」
「なんか…変わったね…」
今、高校生になった私ならこの時の天道さんの気持ちがわかる。
(何この子?!こんなにも可愛くなってー!これじゃ、この子をからかえないじゃない!だって明らかに私より可愛いじゃない!まるで神みたい。オタクだなんて言われても信じられない。くっそーー!)
と、こんなことを考えているに違いない。実際に私の方が数百倍は可愛いし。
それからはヨウキャの分類となり、友達もたくさん増えた。もちろん天道さんとは話さないけど。
中三の時には学級委員にもなり、完全にヨウキャへと変身した。
もちろん、私は中二、中三の時に20回以上告白されましたー!その中には学年一のイケメンの子もいた。
まぁ、特に好きな人ができたわけでもないし、全員断ったけど。
でもなんか…、告白されるたびに自分が可愛いと思い、最近ではちょっと小悪魔的存在になってるかもね。
そしてそのまま高校に入学…というわけにはいかなかった。
両親がドイツへ出張に行ってしまった。
私の予想が当たるのなら、両親はこの先日本に帰っては来ないと思う。
そもそも、多分私には興味がない。
この機会は、私を捨てるいい機会だと考えてるかも。
なので、私はついていかなかった。
そして両親が最後に残した言葉。
「それじゃあね。この家で過ごしてもいいし、この家売って、どっかに引っ越しても、なんでも自由にしなさい。あなたが生活できるほどのお金は置いていくから大事に使いなさいよ。それじゃ」
なんなの?そんなの私には「あなたはこれから一人だから、自由に生きなさい」と言われてるようにしか聞こえない。
こんな親なんていらない。
この時、本気で思った。
それからは、この大きな家に一人暮らし。
はじめは自由で楽しかった。
でもどうしてだろう。
一人になると、いじめられていた時のことを思い出してしまう。
この静かな空間。時計のカチッとなる音が聞こえる。
私はここには住みたくない。
つい思ってしまうが、ほかに住む場所がない。
それにマンションを探し、管理人さんと話をするとなると、あまり得意なこととは言えない。
そして、渋々ここに住んでいる。
でも、これからは少しではあるが一人でいる時間が減る。
それはここにいる森木 京、宮下 真昼というとても楽しい友達に出会えたからだ。
そして毎日夕飯は一緒に食べる約束をした。
私にとっては、とても嬉しいことだ。
私はこの学校で楽しく過ごすんだ!
よし、今は掃除しなくちゃね。
よーし、頑張るぞー!
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