第31話 ラストスパート

俺たちは昼飯を食べ終えた後、一ノ瀬は洗い物、俺と真昼は掃除を再開した。


正直言ってこれからがしんどい。


これからはこの部屋に山ほどある服などを捨てれるだけ捨てる作業だ。


さすがに、これを真昼抜きでしてしまうと、後から「これは大事なやつだったのにー」と言われるかもしれない。


なので俺はこの作業だけは真昼が帰ってきてからにしようと決めていた。


やってこれからその作業を開始する。


「真昼、今からここの部屋にある服を全部出せ」


「え?下着とかも?」


「おやー、この男は変態さんですなー」


すぐさま一ノ瀬が口を挟む。


うっせー!


「ちげーよ!服!だけだ」


なるほどと真昼は頷き、クローゼットから服を取り出し始めた。


一ノ瀬はニヤニヤしながらキッチンに戻る。


本当に今日だけで何回からかわれてるんだ?


少しは抵抗しないとダメ…だよな。


「京くん、出したよ」


真昼が声をかけた。


どうやら服が出し終えたようだ。


なので、俺は振り返る。


この瞬間、俺はJKという存在の恐ろしさを知った。


「多すぎるだろ…」


さすがに多すぎるだろ!俺なんて服もTシャツ二枚とズボンも二枚。それをローテーションするだけだ。


それに比べて真昼は少なくとも上に着る服だけでも10枚以上はある。


JK…怖い…。


「いや、これぐらいなら少ないほうじゃない?驚き過ぎだよ!私なんて服がもうクローゼットぱんぱんに詰めてるんだから」


おい、どういうことだ?


俺の頭にはひよこが数匹。


何を言っているのか、ワッツ?だ。


そうか、これは夢だな。


俺は頰をつねる。


痛ってーーー!


これは現実なのか…。


自分の頰を犠牲にして現実確認を終えた。


「そ、そうか、それじゃあここ一年間で一回も着てない服を出してくれ」


確かテレビで見たことがある。


一年着ない服はこれ以降も着ない。


「わ、わかった。でも…、ここにある服は全部最近買った服だから一回は着てるよ?」


はい、作戦失敗。


そこで口を挟んだのは一ノ瀬だった。


「まぁ、服はそんなに無理して捨てることはないんじゃない?」


「たしかに…、それじゃあ服は保留ってことにしとくか」


それにしても、こいつはすぐに出てくるな。しかも、こそっと出てくるし!あー、もうしらん。


「それじゃああとは、普通の掃除だね?よーし、頑張るぞー」


そう。これである程度、住めるほどには綺麗になっただろう。


あとは、床の掃除や窓拭きなど、誰にでもできることだ。


「真昼、掃除機ってあるか?」


「うん?ないよ」


ないよじゃねーよ。さすがにそれは汚ねーんじゃね?


「おー、まじか、それはさすがにやばくね?」


ウンウンと隣の一ノ瀬も頷く。


しかし、真昼は「そんなもん必要ないでしょー」みたいな顔してるんですけど?!


「まぁ、ひとまず俺のを使うか」


そう言って俺は隣の部屋に戻り、掃除機をそのまた隣の部屋へと運ぶ。


そして掃除機をつける。


よくもこれで「G」(省略形。部屋に潜む魔物のことです。)がでないものだ。


それにしてもどうしてだろう?


こんなにゴミのある部屋で掃除機を使うと、とても気持ちが良くなる。


俺は黙々と床のゴミを吸い取る。


そして、真昼と一ノ瀬には窓拭きを頼んだ。


さすがにここでは問題が起こらず、平和に終わった。


「終わったーーー!」


その一言目を発したのは真昼だった。


俺たちはなぜこんなに働いたのに感謝されないのだろうか?一言目は感謝だろ普通!


なんだかんだで掃除が終わった頃には午後5時ごろになっていた。


窓拭きなどが終わったら次は、次はとすることが出てきて止まらなかった。


「いやー疲れたなー、ってもう5時じゃん?!それじゃあ私は帰ろっかな…」


「えっ?でも家に帰っても暇だって?」


「あぁ、今日はちょっと見たいテレビがあってさ。録画するの忘れてたから」


(嘘。今日、何故だかわからないけど、京くんを見ていたらアニメが見たくなったのよねー)


「そうか、それじゃあ今日はこの辺で解散にするか、それじゃあおつかれさん」


「うん。おつかれー」


「今日はありがとね」


遅っせーよ!


こうして俺と一ノ瀬は真昼の部屋を出た。


もちろん俺の手には掃除機が。


「それじゃあな。おつかれ」


「うん。それじゃあね」


俺は改めて一ノ瀬と別れると部屋に入る。


それにしても今日は疲れたな。


冷蔵庫を開け、これからは食べる回数が減るであろう弁当を手に取る。


そして、温め、口に運ぶ。


まず!


どうやら一ノ瀬のオムライスを食べてしまった俺は、スーパーのお弁当では満足できない舌になっていた。

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