第28話 呼び方

「この…ばかやろーーーーーー!」


かなり大きな声が、真昼の部屋に鳴り響いた。


数十分前から見てみよう。


「ただいまー!帰ったよー!」


真昼は、はじめてのおつかいを終え、帰ってきた。


少しホッとした自分がいた。


「おー、お帰り宮下さん!わー!結構重かったでしょ?頼みすぎたかな?」


「まぁ、重っかったの重かったけど、大丈夫だよ。結構頑張っちゃった」


「お疲れ様」


「うん!ちゃんと買えたよ!京くん!」


「お、おう…、なんか見落としてないのか?一応確認しといた方がいいんじゃないのか?」


真昼のことだ。必ず何か見落としているはずだ。箸とかサラダ油とか…


「いいよ!確認してみなよ!完璧だと思うけど」


そこまで言うなら確認してやろう。


どれどれ…。


なるほど、やはりこいつはバカだったか。


「なぁ真昼?今日のお昼ってなんだっけ?」


「そんなの私が行く前に一ノ瀬さんが言ってたじゃん!オムライスでしょ?」


「うん。そうだよな。オムライスだよな?オムライスの材料はなんだっけ?」


「なんか話し方気持ち悪いよ。ご飯とお肉と………」


「一ノ瀬にもらった紙と今ここにある食材を確かめてみな?オムライスを作る上で一番必要なものがないきがするんだよな…」


「そんなことないとおもうけどな…」


そう言って真昼は袋から買ったものと、ポケットから一ノ瀬にもらった紙を取り出した。そして、一つ一つ確認していく。


「なるほど…」


先に気づいたのは真昼ではなく、隣にいた一ノ瀬だった。


この瞬間、一ノ瀬の真昼への印象がだいぶ変わったはずだ。


だってだよ?この食材がなかったら、オムライスじゃなくてただのケチャップライスじゃん?これはもうバカだけの言葉では表せないのかもしれない。


真昼はペンを取り、食材があれば紙に線を引いていた。


こういうところはしっかりしてるのにな…。


線を引き続け、ここに食材がなくなった時にやっと気づいた。


「あーーー!卵買うの忘れてたーーー!」


こうして今に至る。


「今すぐ買ってこいーー!サラダ油とかならまだ仕方ないかもしれないが、卵!卵を忘れるか?!行ってこい!」


少しきつく言い過ぎかもと行ってから思った。


真昼はすぐさま部屋を出て行った。


「そんなにきつく言わなくてもいいんじゃない?宮下さんも頑張ってたんだから」


「まぁ、少し言い過ぎたとは思うが、卵だよ?!普通オムライス作るってわかってて卵忘れるやつとかいるの?」


「まぁ、そこは同感かな…」


さすがに一ノ瀬でもフォローできないほどのことだったらしい。


「まぁ、真昼が帰ってくるまで掃除進めとくか?」


「そうだね…」


こうして掃除を再開した。


掃除を再開して30分も経っていないだろう。


真昼が汗を垂らしながら帰ってきた。


流石に悪いことをしたという責任か、走って行ったらしい。今も呼吸が荒れている。


「た、ただいま…はぁ、帰りました!」


「お帰りー!早かったねー。ね?京くん?宮下さん結構頑張ってたよねー?」


すごいな…流石は委員長というだけはある。


白々しく、さっききつく言い過ぎたことを謝る機会を与えてくれた。


「あぁ、たしかに早かったな。それと…まぁ、さっきはちょっと強く言い過ぎて悪かった」


「いや、私こそ卵を忘れたんだし…。それより…お腹減ったー!」


「誰のせいでこうなっ、あっ、」


一ノ瀬に軽く睨まれたのでやめる。


「ほんとだなー。お腹空いたなー。一ノ瀬さん、ご飯、頼んでもいいかな?」


「もー、私は来未なんですけどー!京くん?」


「あぁ、く、来未…、頼めますか?」


「うん!任せてください!それと、同級生なんだから敬語はやめてよー」


「あ、すいません…」


「もうそれが敬語なんですけどー?」


「ごめん…」


「それでよし」


一ノ瀬は満足したようで、キッチンに消えようとした。


「えっ?ちょっとまって?一ノ瀬さん今、京くんって…」


まぁ、当然の疑問だろうな。真昼が部屋を出るまでは森木くんだったのに、突然京くんって呼んでるんですからね。


「あ、そうだった。宮下さんって京くんって呼ぶじゃん?だから私も呼ぼうかなって。どうせだし、宮下さんも私のこと下の名前で呼んでよ?」


「う、うん。でも来未って呼ぶのも変だし…「くるちゃん」とかはどうかな?」


「うん。それでいこう!それじゃあ私は、「まっひー」かな?」


「うん。そうしよう!」


この一瞬にして2人のあだ名が誕生した。


「京くんも呼びたかったら私のこと、くるちゃんって呼んでもいいんだよ?」


一ノ瀬は少しニヤニヤしながら言った。


またでた。悪魔モード。この状態になった一ノ瀬は少しうざい。でもこれが可愛くて仕方がない。このー、からかいやがってー!


「言わねーよ」


一ノ瀬はケラケラ笑う。


くそ、またからかわれた。


「それじゃあ私はご飯作るね?」


「あぁ、よろしく」


「うん」


そう言って一ノ瀬はキッチンに消えた。


やっと飯だー!


正直言ってよだれが出そうなぐらい楽しみだ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る