第7話 ストーカー

どーゆーことだー!


俺は学校に入るなり、叫びそうになっていた。


学校中ではある噂が広がっていた。


「ねぇ、宮下さん、昨日の下校の時、誰かにつけられてたらしいよ。やばいよね」


「ほんとそれな。入学初日からストーカーとかやばいわー」


(うそ?!そのストーカーってまさか…俺?!いや、これは違うんだ!俺たち、家が隣なんだ!そう、俺はストーカーなんかじゃないぞ!)


そんなことを主張できる友達がいるわけでないし、そもそも突然俺が主張したところで怪しまれるに違いない。幸いなことに俺だということはまだバレてない。黙っておこう。


そう決心した数秒後、その事件の原因となった頭のおかしな女が現れた。


クラスの奴らは真昼を見つけるやいなや、突進するかのような勢いで走って行った。


「宮下さん!昨日は大丈夫だった?ストーカーに付きまとわれてたって聞いたよ。ほんと大丈夫?」


「ストーカー?そんなのいたっけ?気づかなかったよ。あっ!そういえば…」


(うそだろ?なにそのひらめき?めちゃくちゃ怖いですけどー!さすがにあいつ、言わないよな?こんなとこで「実はそのストーカーの正体は森木 京くんでしたー!」なんて言ったら学校中が騒ぎになって、もしかすると俺、退学とかになっちゃうかも。

「入学2日目にして退学通達!理由は、ストーカー」これが明日の新聞の一面を飾ってしまうかも!

頼むぞー、少しは信頼してもいいんだよなー?!)


「そういえば、森木くん!私の後ろでついてきてたよね?マンションでもあったし」


(おーーーーのーーーーう!!!!!!!言っちゃったよ、この…くそ女め!やっぱり脳みそは空っぽだったかー)


「えっ!どういうこと?!森木くんがストーカーの正体だったってこと?最低!」


そう言って真昼に事情を聞いていた奴らが俺の周りを囲む。それは周りから見るといじめにしか見えないだろう。


「ねえ!どういうことかな?!君そんなことしてもいいとでも思ってるの?!ねぇ!なんとか言ったらどうなの?!」


「たしかに、俺は下校の時、宮下さんの数メートル後ろを歩いてたよ。でも、下校の時同じ道を歩いてただけだよ」


「なに言っての?!こんな状況になっても、まだ言い訳?!ふざけないでよ!しかもマンションまで行くってどういうこと?!住所特定とか怖すぎるわ」


「それは…」


「うっるさいわね!」


ちゃんとマンションのことについて言おうと思った。が、すぐに黙れと言われてしまった。


そして勝手に俺の裁判が始まった。

裁判長になったつもりか、ヤンキーそうな女が俺の前の席のやつの筆箱を勝手に取り、机にぶつけた。


「バンバン!判決!森木 京は有罪!死刑とする!」


(いや、判決早すぎるでしょー!なんだよその舐めた裁判は!)


言おうとした時、その女は筆箱に入っていたハサミを手に取り笑顔で言った。


「死刑執行!」


その瞬間ハサミは俺の方へ直進してきた。


「や、やめろー!」




この一言とともに俺は目を覚ました。


どうやらこれまでの一件は夢だったらしい。


俺自身とても疲れた。これから学校とかめちゃくちゃだるいんですけどー!休もうやとも考えた。でも、入学2日目で休むのはまずいと思い、用意をして部屋を出る。


(それにしても妙にリアルだったよなー、今日の夢、昨日のことが出てきたし、めっちゃ怖いわ)


そして、学校に着き、教室へ向かう。


(ん?何か教室の方が騒がしいぞ?もしやこれって…)


その予想は見事に的中していた。


クラスでは宮下のストーカー事件の話で持ちきりだった。


聞き覚えのある言葉。それを聞くたび、俺は恐怖で体が震える。


(えっ?俺って今日死ぬの?入学2日でヤンキー女の適当裁判の結果死ぬのか?そうか!どうにかできないのか?そうだっ!夢と違う行動をとったら未来が変わるかもしれない。ひとまず教室にいると殺されるし、トイレにでもこもろうかな…)


そう決意して、椅子から立ち上がったと同時に現れてしまった。


そう。宮下 真昼だ。


真昼が来ると夢と同じようにクラスの奴らは近づき、聞き込みを開始していた。


もう終わりだな。


俺は諦めた。ここで俺は死ぬのか。まぁ仕方ないか。どうせだし、ちゃんと殺害の原因となった宮下の言葉でも聞いてやるか。


「ストーカー?そんなのいたっけ?気づかなかったよ」


そう。この後、彼女の見事なひらめきにより俺は処刑されるのである。


あれ?どういうことだ?真昼がひらめいてないぞ。

クラスの奴らも「そうなんだー、きおつけてねー」と言って離れていく。


どうやら俺は助かったらしい。


助かった理由は…は…宮下 真昼という少女は、現実よりも夢の方が頭が冴えてる人間だから、ということにしておこう。


真昼が席に座る。


「お前がバカで助かったよ。本当にありがとう」


一応聞こえないほどの小さな声で感謝した。


こうして入学2日目の午前に起きた大事件は幕を閉じた。

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