第03話 お嬢様と従者の王都生活
――朝日が昇ると同時にクローディアは目を覚ました。
クローディアの起床タイミングは極めて正確ながら毎日少しずつ変化している。
まだマリアは起きていない。
とりあえず水を一杯飲んだ後、顔を洗う。
寝ているマリアの上に覆いかぶさると、彼女のおっぱいを揉みしだく。
マリアは目が覚まし、長い手足で殴り蹴飛ばすがクローディアはケロリとしている。
「……おはようございます、お嬢様」
「おはよう、マリア。今日もいいおっぱいですわ」
マリアはクローディアの髪を
寝間着から学院の制服に着替える。
授業にはまだ早いが、クローディアは1人で外に出る。
学院に行くわけではなく、トレーニングを行うのだ。
城壁の外に出ると、城壁に沿って走り出す。
ただ走っているのではない、クローディアは自らに重力魔術を使用しているのだ。
体重は実質倍化し、身体に極めて強い負荷がかかる。
さらに重力魔術を使用していること自体によって魔力も鍛えられているのだ。
ちなみに、魔術学院の制服はかなり動きやすくできている。
作るためのコストは高いが生徒にはこれが無償で与えられるのだ。
さらに汚れたり破れたりしても無償で交換してもらえる。
王立魔術学院はそれだけ特別なのだ。
ふと、魔力を感知した。
向こうからも誰かが走って来ている。
自分と同じ学院の制服、赤みがかった短めの髪、体格は小柄である。
クローディアはこの少女を知っている。
少女がすぐ近くまで来た時、クローディアは足を止めた。
それを見て少女も足を止めた。
「あら、確かサニー・フェアハートさんでしたわね?」
「ええ、そうよ。あなたはクローディア・ウィンフィールドね」
「アナタも同じトレーニングを?」
「こんな地味なトレーニングをやってる魔術師なんてアタシぐらいたと思ってたわ……」
そう、サニーも自身に重力魔術を使いながら走っていたのだ。
「ところでサニーさん、ワタクシと決闘しませんこと?」
「は? アンタ、何を言ってるの……? せめてアルバート・ロックウェルに勝ってから言ったらどうなの?」
「勝ったら受けてくださいますの?」
「なんでそうなるのよ……。だいたい、何を賭けるの?」
「う~んとぉ、え~っとぉ」
「じゃあね」
考えるクローディアを尻目にサニーは走り出した。
「ああ……行ってしまいましたわ。仕方ありません。機会はいくらでもありますわ」
そう呟いてクローディアは再び走り出した。
かなり大きな都市の周囲をものすごい速さで走りきると、次は魔術学院の外周を走り始めるだった。
家に戻れば、マリアによって朝食が用意されていた。
朝の主食はライ麦を原料とした黒パンだ。
小麦を使用した白パンよりも安価で栄養もあるが、ちょっと酸っぱい。
だが、薄くスライスしたチーズを乗せるとそこそこ美味しく食べれるのだ。
さらに野菜のポタージュが付いている。
「相変わらず少ないですわね」
「お金が掛かりますので……」
「家でも少ない、学院でも少ない、ワタクシはどこでたくさん食べればいいのですの?」
「将来、政府の要職に就いてから好きなだけお召し上がりください。
そもそも魔術を使わなければそこまで多くの量は必要ないのはよく知っております」
「ぐぬぬ……」
マリアは振り子時計を見る。
「さて、そろそろ学院に行く時間です」
「そうですわね」
二人で家を出て、学院の門の前で別れた。
*
クローディアが学院にいる間、マリアは掃除、洗濯、買い物などを行わなければならない。
これら全てを一人でやるのだからかなり大変だ。
正直、クローディアの置かれている状況を考えると気が気ではない。
だが、マリアにできるのはいつも通りに仕事をこなすことだけなのだ。
まずは朝食の食器を洗わなくてはならない。
汚れた食器と洗濯物を持って近くの洗濯場へ向かう。
洗濯場は行政によって管理されている共同施設だ。
川から水を引き込み、洗濯用水として使うことができる。
次に買い物だ。
王都には国中から様々な商品が集まっており、買い物の選択肢は多いが物価が高い。
毎日のように買い物を続けていると、店員に顔も覚えられて多少はオマケしてもらえるようになった。
水汲みも忘れてはならない。
城壁内のあちこちに共用の井戸があるので、そこで汲んで運ぶ。
ちなみに昼食だが、マリアの方は自分一人分の食事を用意するのは効率が悪いので、飲食店で済ませることが多い。
時間が余ればクローディアと同じルートを走って体力を付けている。
無限に近い体力を誇るクローディアの従者には必要なことだ。
授業が終わる時間に間に合うように学院の門に向かってクローディアを待つ。
クローディアが現れる時間には多少ブレがあり、遅い場合は何かあったのではないかと心配になる。
幸い、本日はそんなこともなくすぐにクローディアの姿が見えた。
「お荷物をお持ちします、お嬢様」
「ありがとう、マリア」
「本日はいかがでしたか?」
「決闘が近いということで盛り上がっていましたわ」
「そうですか……」
家に帰ると、夕食の用意を始める。
食事の準備の間、クローディアは勉強をしていることが多い。
卒業後の地位のことを考えれば、魔術の訓練より重要なことだ。
夕食には肉や魚を使用した本格的な料理を出す。
朝と同じ様に「少ない」とか「足りない」といった文句が出るが「不味い」とはあまり言われない。
これはマリアがクローディアの好みを把握しているというのもあるが、そもそもクローディアには好き嫌いがあまりない。
人々に食されているものならなんでも美味しく食べることができる。
ちなみにクローディアは炊いた米に生の鶏卵とソースを掛けて食べることを好むが、もちろんこんなことをするのはクローディアぐらいである。
熱を通さない卵を食べることは非常に危険なのだ。
クローディアの気分によっては外食することもあるが、注文しすぎないようにマリアは目を光らせる。
「さて、お腹がいっぱいなったかどうかは微妙なところですが、お風呂にします」
「はい、お嬢様」
夕食の後は入浴だが、風呂を沸かすのはかなり大変なので公衆浴場へと通う。
二人が住んでいる家に“風呂”はない。
いや、たいていの家にはない。
水の用意もそれを沸かすのも大変だからだ。
クローディアの魔術にかかれば湯を用意するぐらい造作もないことだが、貴族令嬢であるクローディアはそういう家事っぽいことをするのを避ける。
それに家が狭いことは解決できず、広い公衆浴場の方が気分がいいらしい。
王都の城壁内は夜でも明るく、外出しやすい。
入浴の時にもクローディアの頭部の薔薇はなくなる。
マリアがクローディアの身体を洗うことは当然だが、クローディアもマリアを洗う。
クローディアの手付きはイヤラシイ。
「あ~やはりマリアのおっぱいは最高ですわ~」
「お、お嬢様、このような場所ではおやめくださいっ」
「このような場所でなければよろしくて?」
「そ、それは……」
「うふふ……♪」
帰宅後は寝間着に着替えて寝るだけである。
グッナイ!
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