第四章 第十二話

すごくかわいい顔でこちらを見てくる。こんなの男だったら断れねぇだろ!例えx軸があるとしても……貧乳派の俺としては、x軸はもう少し抑えていただけると助かるのですが……

「大丈夫ですょぉ~で、どちらに行かれたいんですか?」

「映画館です!」

「わかりました!では、一緒に行きましょう!はぐれないようについてきてくださいね!」

 なんで、一緒に行くのかって?だってこんなかわいいお姉さんと少しでも長く一緒に―――じゃなくて、また迷いそうだから……

 快く引き受けた俺氏。これで好感度はUP!!UP!!いやぁいい事してるわぁ~これで、俺も理想のハーレム生活に一歩近づいたわけだ。


 階段をのぼり、映画館がある4階へとたどり着いた。映画館のほうへ歩こうとした手前女性が俺の腕をつかみ、従業員だけしかはいれない階段兼物置のような場所へと俺をつれてきた。

「ちょちょ!映画館はさっきの階ですよ!ここは立ちいり――――」

「四条柊人。貴様。私に力を貸せ」

 急に名前を呼ばれた。俺は名乗ってないぞ?耳に音が入って来ない。頭が真っ白になった。でも、この展開前も……そうだ!ニソラの時だ!!

「いきなり、呼び捨てとは、恐れ入ったぜ。お前は一体?ニソラの仲間か?」

「おっと!申し遅れたな。私はメルディア・ゾーディア。ゾーディア財閥の者だ。で、あいにくだが君が言っているニソラ?そのような人物はしらんな」

 ゾーディア財閥――ベリト財閥に並ぶ一流財閥だ。どうして、そんな一流財閥の人が俺に?まさかコイツも能力者?

「で、だな。本題に移るとしよう。単刀直入に言う。四条柊人。シルフへ戻れ」

「……え?」

 予想外の言葉だったので、理解が遅れた。

「……一体どういうことですか?ゾーディア財閥の方が、何故シルフの事を?シルフの回し者か何かでしょうか?」

「私はシルフの回し者ではない!ただ……妹を……救いたいんだ」

 メルディアは歯を食いしばり、涙をこらえながら、真剣な表情でこちらを見ている、明らかに何か大きな事を抱えている。妹さんは大変な状況に陥っている。ひしひしと伝わってきた。嫌な予感が。

「分かりました。話を聞きましょう。妹さんがどうされたんですか?」

「協力感謝する。……私の妹は……鍵の一人の可能性がある。それで、命の危険もあるとして、シルフに保護された。そこで、妹を助けるためには、貴方の力が必要だと言われた。この計画にゾ―ディア財閥も総力を挙げて支援しようと考えている。金で解決できる問題ならなんだってできるが、これだけは何ともならない。今のところ、何とか問題を乗り越えてきたが、あとは君だけなんだ。君が、妹を救う最後の鍵なんだ。頼む。だから、どうかシルフへと戻ってほしい。少々強引な手を使ってしまって申し訳ない」

 メルディアが少し表情を緩めた。

 またしても、シルフは汚い手を使ったのか……でも、妹さんが鍵として扱われているのならば、それは俺が引き起こした事によるもの。これ以上自分のせいで不幸になる人を増やしたくないと誓った。しかし真白にあんな目を合わせたシルフ。

「北斎真白……」

「え……?」

 メルディアが急に彼女の名前を口にした。

「君の幼馴染だったな。そして、シルフに監禁されているもう一人の鍵。さぞひどい目にあっているだろう。私はそんな目に妹を合わせたくない。北斎真白にもそんな目にあってほしくなかった。私はそんな目に誰も合わせたくない。だから約束しよう。彼女の保護を私たちが請け負う。彼女を彼らの思い通りにはさせない」

 その言葉を聞いて、脳内で均衡していた天秤がガタッと傾いた。

「分かりました。シルフへ戻ります」

 俺の決意を聞いてメルディアの顔がパーっと明るくなった。

「協力感謝!北斎真白の事は安心しろ!!約束は守る。それがゾ―ディア財閥のモットーだ」

 よし。いざ、戻るとなれば……早い方がいいな。明日にも戻るか。……ちょっと待てよ。迎えが来ないってことは……またあのタクシー代払うの?!流石にそれは……

「メルディアさん……シルフ本部までのタクシー代貸してください……」

「あ……明日の朝、財閥の車で迎えにいくよ……」

 金持ちは違うなぁ。でも、破産しなくて済んだ。夏コミも近いから……

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