厨二男子と少女の記憶

氷堂 凛

プロローグ

目の前には大きな闇。


 どんどん大きくなっていく。


「力不足です……」

「嘘だろ?おい。どうすんだよぉおお!!」

 俺は涙を流しながら叫んだ。

「もういいよ。私が行くよ。そうすれば、解決でしょ?長い間ありがとね……」

 腕の中にいた少女が声を上げた。

「はぁ?何、言ってんだよ!そんなことしたらお前はどうなるんだよ!!!」

 涙で視界が滲む。

「そんなの分かんないよ……でも、それで全てが戻るなら……ね……?」

 そんなのってないぜ……なぁ神様よぉ。どうしてなんだよぉ!なぁ!あんたらは世界を変えちゃうくらいすごいんだろ?だったらさぁ!助けてくれよぉ!

柊人しゅうと……残念だが、彼女の言うとおりだ、もう、それ以外に方法は……」

 銀髪の少年が声を上げた。

「お前はそれでいいのかよ!コイツが……コイツがどうなってもいいってのかよ!」

「そんな訳ないだろ!!!!」

 少年は下を向き、目線の先に小さな水滴を一つ、また一つと落とした。


「なぁ……皆!考えてくれよ!考えれば方法があるはずだよ!そうやっていままで乗り越えてきたじゃん!なぁ。頼むからさ」

「…………」

「…………」

「…………」

 たくさんの人が居る中、音は消え、ひたすら残酷なマーチを奏でる闇の音以外何も聞こえなくなってしまった。


「おい、誰か!誰か頼むよぉ!」

スーツを着た女性が声を上げた。

「そんな方法もう、ないわ……ここはアニメの世界でも漫画の世界でも

ないわ!まぎれもない現実。……文書にもあった通りなのよ?男なら聞き分けなさい!」

「嫌だ!!コイツは俺の……大切な……」

 涙で滲む目をとじ力一杯叫んだ。

「もう……いいよ……私は自分で決めたの。何が何でも私が行かなきゃ……そうしないとみんなが幸せになれない。そんなの私嫌だもん……だから……ね?」

腕の中にいた少女が小さな笑みを浮かべながらこちらをみつめる。

涙が止まらない。

それをみながら少女が立ち上がり、言った。


「でも、その前に……」

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