第24話  真の女王の誕生

 ルネスの像から放たれた光は、ミサトの姿を女王の姿に変えていた。

 

 オーガンジーの優しい合歓の木の花のような淡い紅色に、七色の小花の刺繍が散りばめられたドレスを纏った姿に、皆、溜め息をついた。


「ミサト、本当にきれいだ。女王というより、姫だな。」

「ありがと、お父さん。」

「婿が必要だな。」

 

ギンセイが咳払いをして、アピールした。

「坊主、君はまだ早いぞ。」

 

 周囲が笑いに包まれている中、礼拝堂の扉が開いていた。セラが中へ入った。


 そこには、きれいな姿で、息を引き取っていたハナがいた。


「きれいで優しい顔。やっと本当のハナに戻ったのね。」

 

 セラは、首飾りを自分の首から外し、ハナの首にかけた。


「ソウ、私はリヴとしばらくここに居るわ。ハナと想い出話してる。ミサトさんのとこ行ってあげて。ほら、みんな、待ってる。」

 

 外からは歓声が聴こえていた。

 

 ミサトはバルコニーに出た。

 

 いつの間に…。

 

 青い鳥が飛び交う城の庭には、大勢の村人が割れんばかりの拍手で、迎えてくれた。

  

 城内では、七人のメンバーを始め、ソウ、タカ、コハク達が、涙を流しながら、拍手をしていた。

 

 ミサトは、ベルガが投げ捨てた時計を持っていたシンに気が付いた。

「先生、それ、どうしたの?」

「あぁ、ベルガが『役に立たない』と投げ捨てたものだ。シャイル界のものだが、これから、ベルガの罪を裁くための物証になる。それより、村人の前で、宣言しないと。この歓声に応えるんだ。」


「分かった。ありがとう。」

 

 村人たちに、陽ざしの海が広がった。

 

 一人の村人が叫んだ。


「あれ、虹じゃないか!」


「うおーきれい。虹ってこんなにきれいだったのね。」

 村人は口々に、喜びを叫んでいた。


「たぶん、みんな、虹を見たことないはず。話には聞いていたと思うけど。神話みたいにね。」


「コハクさん、虹ってすごいことなんだね。こんなに人を喜ばせるなんて。ママと一緒に見た虹を思い出しちゃった。」


「今日子も喜んでくれるよ。これからは、ミサトがこの虹のように、人々の希望になるんだよ。さぁ、みんなに、王として、挨拶しよう。」


「うん、お父さん。」


真の女王、ミサトは一歩前に出た。


広場は歓声のあと…静まり返った。

 

ミサトは、バルコニーから、大きな声で、村人たちに話しかけた。 


静寂の中、村人たちは、ミサトの言葉に耳を傾けた。


「皆さん、この国は絶対、良くなります。すべての命は、生きるためにあるのです。決して、他のものが奪ってはならないものです。争いは何も生みません。お互いがを思う心が、多くの愛を生みます。皆が安心して、暮らせるよう、ともにこの国を築いていきましょう。」


 

 村人は一層の歓声をあげ、ミサトの即位を祝った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る