第2章

13話 魔物

「こらこら、仕事中だぞ。あくびするな」


「すみません」


ここはとある山の中。現在は太陽も沈み辺りは暗く焚き火の火だけが唯一の灯りだ。とは言え、今の時代懐中電灯が有るので幾ら山の中とはいえ灯りには困らないはずだが彼らは何か拘りでもあるのだろうかそういう類いの物は持ち合わせていない。


「暇ね」

私はそうやって焚き火をしている2人を見ながら呟いた。彼らとは仕事として行動を共にしているが別に親しい訳では無いし親しくなろうとも思っていないので彼らには関わろうとはしない。


「グルルルゥゥゥ」


焚き火で暖を取っていた私の耳に獣の唸り声のようなものが聞こえてくる。

どうやら彼らもその声に気付いたのかキョロキョロと周りを見渡し警戒する。


すると、暗闇の中から声の主が出てきた。その姿は黒い毛並みの狼という格好であるがこの生物は只の狼では無い。


「こいつはランクBの魔物、ブラックウルフ!まさか、こいつが犯人だったとは」

彼らの内このグループのリーダーである筋骨隆々の男が狼たちの解説をしてくれる。


魔物。ファンタジー世界でよく出てくる人間に敵対する生物の総称である。その、魔物は漫画とかだけの話ではなく実は現実に存在するのである。

因みにランクBは上から三番目のランクであり、ある程度の力を持った者でないと最悪、死を覚悟しなければならない相手である。そんなブラックウルフが3体私達の前に現れる。

ブラックウルフは「グルルル」と唸り声を発しながら私達の方へ少しずつ近寄ってくる。私達を狩る気満々のようだ。


「一旦退避するぞ。これは我々だけで解決出来る問題では無い。協会に報告しなければ」


どうやら彼らはこの狼達を前に逃げるようだ。少々焦れったいと思うが私の受けた依頼はあくまで彼らを事だ。別にこの山に巣食う魔物を始末するという依頼では無い。


「グルアアァ」

そうこうしている間に狼達が私達に襲いかかってきた。


「くっ!・・・≪ファイアボール≫」

彼らの内小柄な方の男が手を突きだした。すると、手に魔法陣が現れ炎の玉が狼に向けて放たれる。実は魔物だけでなく魔法も存在する。そして彼らは実在の魔法使いなのだ。

だが炎は3体の内1体に当たるが炎はすぐに消え無傷のようだ。


「クッソ」

今度は筋骨隆々の男が前に出る。


「≪ストロングフィスト≫」

男の拳に魔方陣が現れる。どうやら拳を魔法で強化して戦うようだ。だが、魔法に素人な私でも分かる。彼では勝てないと。


「だったら、私の出番ね」

私は狼たちに向かって飛び出した。その時、口角が上がりにやけているのが自分でも分かった。何しろこれから奴らをしま・・・守るのだから。

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