12話 依頼達成
宍戸さんは僕が作った解毒剤を飲み、遂に透明化が解けた。宍戸さんは「ありがとうございます」と涙ながらにお礼を述べてくれたがまだ全て終わっていないし、そもそも対価が有る
何はともあれ後は帰るだけなのだがこれがそう簡単には行かない。
「んー。参ったな」
そう、僕達はまだ校門の前で立ち尽くしていた。
宍戸さんは確かに学校から出られないとは言っていたが、透明なのとか精神的なものかと思っていたが文字通り、物理的に出れなかった。
透明な壁でも有るのかのようで校門以外の柵からも出てみようとしたが無理だった。
更に何故か僕までその透明な壁に遮られて出られなかった。
「校門もだめ。柵越えもだめ。でも石なら大丈夫か。んー」
そう、地面に転がる石を投げて見たが透明な壁に遮られる事無く飛んでいったのだ。
まったく、透明人間の次は透明な壁。今日は透明尽くしだな。
まあ、嘆いても仕方無いか。とにかく打開策を考えないと。
まあ、目星は付いて要るんだがな。
「エミリー、何かいい方法はないか?」
僕はさっきから突っ立って何もしていないエミリーに聞く。
エミリーは自分が呼ばれると思っていなかったのかビクっと震え一拍開けてから声を発した。
「わ、私に言われても。貴方の依頼でしょ!」
「でもこのままじゃお前も出れないぞ」
「っ!」
どうやら言葉に詰まったようだ。決まりだな。
「エミリー、これお前の仕業だろ?」
僕は校門の方に指を差して問う。
「・・・そうよ!私がやったのよ!」
エミリーは開き直ったのか理由を尋ねるまでもなく話してくれた。
「だって学校の方が研究しやすいのよ!」
「それでこれは?」
「万が一に備えて張っていたの。今解いてくるから!」
そう言ってエミリーは校門に向かっていった。
それにしても、今日初めて来たとか言っていたが嘘だったんだな。
「ん?って事はあの噂は結局エミリーのだったってことか?」
「記伊さん噂って言うのは?」
「あぁ、ここのところ学校の灯りが付いていたり唸り声がするって言う話だ」
「あーそうなんですか」
宍戸さんがなんだか遠い目をしているが、あーそう言うことか。これは何も言わない方が良いな。
「結界解いてきたわよ」
エミリーの言う通り先程の苦労は何だったのか何事も無く学校を出る事が出来た。
「良し。これで学校から出れた事だし・・・はい、宍戸さん」
「えっと、記伊さんこれは?」
ぼくが渡したのは紙の切りはしだ。そこには数字の羅列が書いてあるが宍戸さんはこの数字の意味を聞いているのだろう。
「僕の口座番号だからこれに振り込んでおいて」
「本当に払わないといけないんですね」
しょげている宍戸さんを余所に「一週間以内に振り込まないと利息が増えるし」と付け加えておいた。
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