11話 解毒剤
「了解。じゃあ依頼開始だ」
先ずは、透明化の解除だ。薬でそうなったのなら解毒剤を作れば良いだけだ。そうと決まれば。
「ここに血を垂らしてくれ」
僕はポケットからスマホを取り出してそう指示を出した。
「えーっと。流石に引きますよ」
宍戸さんが嫌悪感の籠った声で答えた。
「憶斗。貴方って・・・」
エミリーまでもが汚物でも見るかのような目で僕を見ている。
あれ?僕何か不味いこと言ったかな?
「いや、まぁ。いきなり血を出せとか言われたら、そりゃ警戒するよな」
僕の疑問を察したのかオピスが答えてくれた。確かに言い方が悪かった。
「いや、別に変な意味じゃない。薬の効果なら解毒剤を作ればいいと思ってな」
「だからって血を取る理由にはならないでしょ」
「薬の成分を知る為に血から判断しようと思ったんだ。このスマホは色々と改造されてるから、血の成分を調べる事も出来るんだよ」
「ふーん」
どうやらエミリーは納得してくれたようだ。
「スマホにそんな機能ありませんから!」
対する宍戸さんは納得出来ていないらしい。確かに常識的にはあり得ないと思うかも知れないが裏社会だとこういう物は当たり前なのだ。
「とにかく。騙されたと思ってやってくれ。今の所それ以外に透明化を解く方法が思い付かないから」
「うぅ。分かりましたよ!」
宍戸さんは少々投げやりに自分の血をスマホに垂らした。
『血を検出しました。解析を開始します。・・・・。解析完了。解析結果を表示します』
「なるほど」
僕はスマホに表示された解析結果を見て考え込んだ。
「どうですか?」
宍戸さんが不安そうに聞いてくる。
「これなら化学室に有る物で何とかなる」
「え?それって今から薬を作るんですか?」
「当たり前だろ。宍戸さんが飲んだ薬は何処にも売ってない薬だからな」
そう。彼女が飲んだ薬は何処にも売ってない。表社会にも、裏社会にも売っていない薬だ。まあ、裏社会は薬を開発してもほとんど売ろう何て思う奴はいないと思うが。
◆ ◆ ◆
よし、これで良いだろう。
僕はビーカーで混ぜていた液体が青色に変わったのを確認すると混ぜるのを止めた。これで解毒剤の完成である。作成には30分くらい掛けた。
僕はその薬を持って化学室を出る。
扉を開けると、エミリーと宍戸さんが立っていた。
「宍戸さん薬が出来たからこれを飲んでくれ」
「こ、これですか」
宍戸さんは戸惑いながらもビーカーを受け取り、一瞬躊躇ったが覚悟したように一気に飲み干した。宍戸さんは透明なので青色の薬が消えているようにも見える。
そして薬の効果はというと。
「お、おおお!」
宍戸さんが奇声を発する。
それと同時に先程まで気配しか分からなかった宍戸さんの姿が徐々にではあるが見えるようになってきた。
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