8話 敵か、味方か
トン、トン、トン
深夜の学校にその足音だけが響く。
足音は徐々にこちらに向かって来ている。距離、およそ30m。
「止まれ!誰かは知らないが視えているんだぞ!」
トン、トン、トン、トン
それでもなお足音は響く。いや、先程よりも若干早くなった。
「っ!」
武器は持っていないようだかそれは別に危険がないという訳ではない。体術が優れていたり、能力による攻撃も考えられる。
それにしても意味が分からない。僕は視えていると言っているのにも関わらず逃げたり、攻撃して来たりしない。妄言だと思っているのか?
「憶斗何が起こっているの?」
エミリーには足音は聞こえるがその他の情報は何もない。だからか、僕に情報を求める。
「ああ。よく分からないが透明人間の女が歩いて来ている。あと20mだ」
「どおするの憶斗。戦うの?逃げるの?」
「んー。逃げるぞ」
依頼でもないのによく分からない相手と戦う意味もない。だから僕は逃げることを選択した。
「待って」
だが、逃げようと背を向けた途端声が聞こえて来た。突然の声に振り向くと透明人間が小走りで走ってきた。
「どういうこと」
エミリーが小声で聞いてくるが僕もよく分からない為、答えられない。もし僕たちを殺すのが目的なら声をかけずに何かしらの攻撃をして来るはずだ。それに襲って来ると言うスピードでもない。
そうこうしていると透明人間は僕たちの近くまでやって来た。
「はぁはぁ」
ちょっと小走りしただけなのに疲れたようで息を切らしている。
「あの」
息を整え僕に話しかけてくる。何かの覚悟を決めたのか真剣に。
「助けて下さい!」
そう言って透明人間は頭を下げる。
「・・・」
「・・・」
「は?」
いきなりの事で間抜けな声を出してしまった。何しろ今の今まで敵だと疑っていたのだから。
だがここは頭を切り替えなくては、そう思い僕は彼女に言う。
「いいよ。ただしそれ相応の対価は貰うけどね」
すると彼女はパッと頭をあげて感激の表情で「ありがとうございます」と喜んだ。
「はぁー」
と空気を読まない盛大なため息が僕の横から聞こえて来る。恐らく僕の事を呆れてか、彼女の事を哀れんでかのどちらかだろう。まあ僕は気にしないけど。
何しろ僕は『暗闇の何でも屋』。対価さえ払ってくれれば誰であろうと依頼を受ける。
まぁ、取り敢えず話を聞こう。対価は内容によって決まるからね。
「それで、君は何をして欲しいのかな?」
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