第1章 憶斗の1日

6話 幽霊の噂

「ふぁぁ」

僕は大きな欠伸を1つして机に突っ伏すように寝た。


「憶斗君、大丈夫?」

寝ようとしていた所で誰かが声を掛けてきた。

まぁ、声で誰かは分かるんだけど。


「大丈夫、ちょっと寝不足なだけだから」

本当に、昨日はやたらハッカーが攻めて来たし。

僕1人で10件とか、働き方改革どうした!

まぁ、公に出来る仕事じゃないし関係ない事は分かってるけど。


「はぁ」


「憶斗君、本当に大丈夫?」


「うん。大丈夫、大丈夫」


「放っておきなさいよ優花。どうせ夜遅くまでゲームをしてたんでしょ」


酷い言いがかりだが仕事の事は言えないので素直に頷くしかなかった。


「なんだ憶斗寝不足か」


「まあな」


これでまたいつものメンツが揃ったわけだ。


まず、始めに声をかけて来たのは天野あまの 優花ゆうか。どちらかと言うと物静かで優しい女の子だ。次に、言いがかりをして来たのは石住いしずみ 友里恵ゆりえ。優花とは幼馴染でバスケ部に所属しており活発な女の子である。最後に声をかけて来たのは寺本てらもと 隼人はやと。コミュ力が高いというか、調子乗りというか、まぁそんな奴だ。

とにかく、3人共この高校で出来た友達だ。


「そうだ、皆知ってるか?最近夜になるとこの学校にお化けがでるらしいぞ」


「え!お化け」


「お化けって、そんなわけないでしょ」


「だけど、真夜中になっても灯りがついていたり、唸り声みたいなのが聞こえて来たりするって噂もあるんだぞ」


お化けね。僕の情報網ではそんな話聞かないしな。


「何かの見間違いとかじゃないのか?」


「そ、そうだよ。お、お化けなんて怖いよ」


「だけどよー」


 キーンコーンカーンコーン


「ほら、授業を始めるぞー」


授業の開始を知らせる鐘が鳴るとこの話は打ち切られて各々の席に座る。



◆ ◆ ◆



その夜


「反応は無しか」


「ってことはやっぱ只の噂だったって事か」


「そうみたいだな」


僕達は今、高校の正門前にいる。

何故か、それは昼間隼人が言っていた幽霊について調査するためだ。


「よっと」


自分の目線より少し低い門を軽く飛び越えて校内に入った。


「それにしても憶斗、仕事でもないのに何で噂の調査しに来たんだ」


「まぁ、もし本当に幽霊か何かだったら不味いしな。一応だよ」


さて、さっきから話していて気付いた人もいるかも知れないが僕と話しているもう1人はここには居ない。何故なら彼は自作したAIだからだ。名前はオピス、ゆるキャラみたいな蛇の姿をしている。


「何ヘラヘラしてるんだ?・・・っ!止まれ憶斗」


オピスに言われて僕は一先ず止まる。


「どうしたんだ?オピス」


「廊下の左側を見てみろ」


オピスに言われて僕は階段を登り切ると廊下を覗き込んだ。


見てみると教室から灯りが漏れているのが見えた。


「どういう事だ?誰かいるのか?」


「知るか!俺だって監視カメラをハッキングして外から校舎を見ているだけなんだから。

取り敢えずここから見た限りではその部屋だけだ。」


「そうか」


どうする。レーダーは反応してないし霊の類いではなさそうだが。


ガラガラ


僕がどうするか考えていると扉が開く音が聞こえて


「誰かいるの」


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