3話 念の力を持つ女の子
「うぇーん、うぇーん」
とある小さな公園、そこに植えてある無数の木の1つ。その根元で小さな男の子が泣いていた。 その姿から幼稚園ぐらいの年齢だと推測できその男の子の横にはお母さんと思われしき女性が男の子を慰めていた。
「また新しい風船貰いに行けば良いから、ね」
「でもぉ」
だか、男の子はさっき貰った風船が良いようで高い木の枝を指差している。その先には赤い風船が木の枝に引っ掛かっているのが見える。どうやら男の子は貰った風船を手放してしまい風に煽られて木の枝に引っ掛かってしまったようだ。その高さは母親の身長より高く取ることが出来ない。なので先ほど風船を配っていたピエロの所まで行かせようと説得しているのだが男の子は頑なにそれを拒否していたのだ。
「可哀想」
すると、この親子を見てそう呟く女の子がいた。その女の子は公園の入り口の歩道に立っていた。どうやらその子は風船を無くした男の子を見て哀れんでいるようだ。しかし、この女の子は先の母親より背が低く物理的には風船を取ることは出来なさそうだ。
女の子は掌を風船の引っ掛かっている枝に向けた。そのまま掌を男の子に向けるように移動させる。すると、掌の動きに合わせて風船が男の子の方まで降りて行きそれに気付いた男の子は風船に付いた紐を握った。だか普通、風船がしぼんで降りて来るのには数日は掛かるがまだあの風船は貰って一時間も経っていないのであり得ない筈だし風船も十分に膨らんでいるのでそもそもしぼんで降りてきたとは考えずらい。故に母親は驚いた顔をしているが男の子は風船が戻って来て喜んでいる。だからか母親も男の子が喜んでいるのを見て不思議現象の事を考えるのを止めて「良かったね」と男の子に微笑んでいた。
その光景を見た女の子は母親が不思議現象を詮索しなかったのにホッとしつつその場を去って行った。
◆ ◆ ◆
「ただいま」
そう言って女の子はごく普通の一軒家に入っていった。
「お帰り心美」
リビングに行くと男が昼ごはんを食べながら言った。
「兄さん。もうおやつの時間だよ」
そう、今の時刻は午後3時に近いので男が食べているものを昼ごはんと呼ぶには遅すぎるのだ。
「別に良いだろ、そんな事」
「まぁそうだけど・・・」
だが、その男にとってこんな時間帯に食事をするのは初めてではなく休日なら当たり前の光景なのだ。
だから女の子もそこまで突っ込まずに自分の部屋に行こうとした。 だか何かを思い出したのかドアノブに手を触れたまま男の方に振り向いた。
「そうだ、兄さん。はいこれ」
そう言うと女の子のポケットからUSBメモリが出てきた。そのUSBメモリは男の手元まで宙を浮かびながら移動した。その時に女の子は投げた訳でもなく手を触れずに飛んで行ったのだ。
男はUSBメモリを手に取ると何の疑問も持たずに「ありがとう」とお礼を言った。
そして女の子も気にせずリビングを出ていった。
そう、これが彼女の能力、物を触れずに操る『念力』の能力なのだ。
女の子の名前は
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