2話 怪物並みの力を持つ女

「さすが憶斗!」


ビルの屋上でそんな事を呟きながら女は警察によって封鎖されている交差点を見ていた。

しかも女はフェンス等の仕切りが無いことを良いことに、ビルの端に足をゆらゆらと動かしながら座っていた。


まるでこの高さが何とも無いように・・・



「さて、じゃあ私も部活に行きますか」

そう言って女は立ち上がった。そして非常階段の方に向かう・・・という訳ではなく、女はジャンプをしてビルから飛び降りた。

いや、飛び降りるというのには少し語弊があるだろう。何しろその女は下に落ちているのではなく、むしろビルの上を跳んでいるのだから。


そして女は大通りを挟んだ向かいのビルの屋上に静かに着地をした。と思ったらすぐに走り出して、ビルの端に行くとジャンプをしてまた向かいのビルに跳んだ。


そうやってビル伝いに目的地まで移動していった。


◆ ◆ ◆


それから5分後、薄暗く狭い路地裏に女は着地した。


そして路地裏を歩き、大通りに出て、さらに歩いて行くと、高校の校舎に正門から入っていった。


そう、彼女はこの高校の生徒なのだ。


高校では今日が土曜日と言うこともあり校舎の中にはほとんど人がおらず、対象的に外のグランドではサッカー部や野球部、陸上部と言った運動部が活気良く練習をしていた。


そして、女はグランドの陸上部が練習しているスペースに来てようやく足を止めた。


「あー!亜加里あかりやっと来た」

そう言いながら女に近付いて来たのはジャージ姿の女、陸上部の部長である。

女が言った言葉から推測出来るが亜加里と呼ばれた女は陸上部の部員である。さらに言うと練習が始まってずいぶんたってから到着したのである。


「ごめん、奈々。遅れちゃった」

そう言いながら女は奈々と呼んだ女に手を顔の前で合わせて謝った。


「分かったから、先生に言ってきな」


「うん、分かった」

そう言うと女は部活の顧問である教師に遅れた旨を話し練習に参加した。

因みに教師には寝坊したと言う言い訳を話したのだか部活は午後からなのでどれだけ寝ていたんだと呆れられていた。


それから亜加里は他の部員と合流して練習に参加したのだが練習メニューである300m、3本3セットを全て1位でゴールし更には他の部員が疲れているのにも関わらず一切疲れた様子を見せずにいた。その姿からは手を抜いて楽をしようとしているようにも見えるが部員の中には県大会で優勝しているような選手もいるので他の部員が遅いという訳ではないので周りからは『その気になれば全国大会まで行けるのでは』とか『彼女の底が知れない』とか『化け物だ』とか言われている。

まぁ、一概にも化け物と言うのには否定出来ないのだが・・・。何しろ彼女はビル伝いに移動出来る程の運動神経いや能力、『怪力』の持ち主だからだ。



女の名前は記伊きい 亜加里あかり。記伊家の長女にして『怪力能力者』だ

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