超能力者一家の日常
ウララ
第0章 記伊家の1日
1話 完全に記憶する男
カチカチ カチカチ
薄暗い部屋にキーボードのタイピング音だけが響く。
否。それだけではない。キーボードを打つその人から話声も聞こえてくる。
「まったく、良いところだったのに・・・
姉さんが受けた依頼でしょ」
「分かったから。文句言わない
報酬は半分あげるからさぁー」
「そういう問題じゃなくて・・・」
はぁとため息を付きながらもパソコンを動かす手は止めない。
パソコンには車が良く通る車道の映像が写し出されていた。
映像は一台の車が前の車を無理やり追い越しながら進んでおり、後ろにはパトカーが3台サイレンを鳴らしながら追いかけるというものだった。
さらに、この4台の車は何故か赤信号に引っ掛かることもなく進んでいた。
しかし、それはただ運が良かったと言うわけではない。
今、パソコンを操作しているこの男が信号機をハッキングして操作しているからだ。
「それで姉さん、結局どんな依頼なの?
警察もいるし・・・」
「今、追われてる車あるでしょ
あの車は、宝石泥棒なの。だから捕まえてって依頼よ」
「あー。なるほど、お得意様って事か」
男は今受けている依頼の中から宝石店の警護の依頼を思い出した。
「そういうこと」
姉は男の導き出した答えに軽く返事をした。
と言うのも彼ら『暗闇の何でも屋』が受けている依頼は何百、何千とある。その中から1つの依頼を瞬時に思い出すのは尋常ではない。
否。彼らは元々普通ではない。何しろこの男は見た事、聞いた事全てを記憶し忘れることの無い『完全記憶能力』を持つものだからだ。
「それでいつまでこうしていればいいの?」
「うーん。
「いや、そんなの夜までかかるだろ」
男は怒りを含みながら姉に抗議をした。
何しろ今はまだ昼間、車も多い。だから周りに被害を出す訳にもいかないし、そもそも超能力の事を知られる訳にもいかない。
だがいつまでもこうしている訳にもいかない。この男にも別の用事が有るからだ。
「姉さん・・・もうこっちで片付けていい?」
「まぁ、仕方ないわね。私には今の所手出し出来ないから」
「了解。少し荒っぽいけど・・・」
そう言うと男はさっきよりも真剣にパソコンを打ち始めた。
カチカチ カチカチ
「よし・・・今だ!」
カチ
男はエンターキーを押すとパソコンの操作を止めて大きく伸びをした。
男が何をしたかと言うと、さっきまでと同じように信号機を操作したのだが、今回は追われている車が進んでいる信号機も交差する左右の信号機も赤にしたのだ。しかも不自然にならないように。更に、追われてる車をハッキングしてその交差点の中央に停めたのだ。
「
突如1人の女性が部屋の入り口に現れてそう言った。
「分かった。今行くよ。」
そう言って男は昼食を取るため、部屋を出て行った。
男の名前は
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