第06話 離れたくないから


「Meiでーーーす!デートの続きですよーーー!」




公園について、僕たちは芝生へと向かい、ふたりで腰掛ける。並んでこうやって寄り添っている時間は、僕にはいままでなかったことで、僕の鼓動は高鳴っていた。


それから、今まで会えなかった分を賄うかのように、二人でいろいろなことを話していた。そして、ただ、こうやって会話するだけの時間でも、ふたりをはやく引き離そうとするかのような時のたつ速さは加速しているようだった。


「じゃ、そろそろお昼にしようか」


僕はそういい、作ってきたお弁当とお茶の入った水筒を取り出す。


「ごめんなさい、本当なら私が手料理を作って喜ばせたいと思うのに・・・家事が全然できなくて・・・」


みどりさんはちょっと悲しい顔を浮かべてそう言った。


「気にしない気にしない。できないことはお互い助け合っていけばいい。それに、まだ先は長いんだから。それに、練習して、そのうち、作ってくれたらとても嬉しいからね。」


「はい。がんばります!」


元気いっぱいの声で返事をしてくれたみどりさん。まあ、そんな事を話しながら、ふたりでお昼の食事をした。


食事が終わり、片付けし終わったあと、急にみどりさんの態度が真剣なものに変わったように感じた。どうしたんだろ?と気になって声をかえようとしたところ、みどりさんが先に口を開けた。


「○○さん、変装をして、姿も見せずごめんなさい。本当は見せたい。でも、今が変わってしまう気がして怖かったんです。だから、今日も変装してしまって。最初は、姿を見せてしまうと、本当の私を見てもらえないと思ってしまい、隠していましたが、今隠しているのは、わたしの姿を見て離れてしまわないと不安があるからです。最初、あなたとメッセージでのやり取りで、姿を隠し、年も若く、わたしの都合で返信がなかなか出来ず、相手にされないかと不安でした。でも、あなたは優しくきにしないと言ってくれました。そして、嫌われたくないと写真まで送ってくれて・・・とても嬉しかったです。そんな優しいあなたと文字だけでの触れ合いだけで、好きになりました。本当の私と向き合って話してくれるのは、多分、今はあなただけです。

通話は、わたしの都合で、メッセージのやり取りだけだったのに、私のほうが我慢できなくなり、お願いしてしまいました。やっぱり、文字だけよりあなたを感じられて、とても嬉しかった。

そして、もう私の心は止められなくて、職場に無理を言い、今日やっと1日ですが、休みをもらって、そして、今日会うことが出来ました。付き合うというのには、本当に少なく拙い手段でのやり取りしか出来ませんでしたが・・・本当に我慢できないくらい好きになってしまってます。だから、怖くて・・・今の私を知ったら・・・離れないかと。。。」


彼女は、思いつめた様子で僕に話す。


僕は、何を言ってあげるのが、一番いいんだろうと悩んだ。でも、よくよく考えると僕がサイトに登録した目的、希望を素直に伝えればいいんだと思い直す。そう、今、みどりさんに感じている思いも込めて。


「僕もさ。振られてばかりの人生、彼女もできず、このまま独り身で終わるのかなって思ってた。で、最後の希望で、あのサイトに登録したんだ。そこで、見つけた、みどりさん。他の人は、僕じゃ無理な条件ばかり書いてて、なにか、条件だけで人を見るぶぶんこあった。だから、みどりさんを見つけたとき、条件じゃなく、本当の僕で付き合えるような気がして申し込んだんだ。ほんと、今思えば、間違いなかったなと。

まだ、今日初めて会えた、それだけしか本当に時間はなかったけど、もう、心は決まったよ。本当は時間をかけてゆっくりとと思ったけど、みどりさんの言葉で決心もついた。僕も、みどりさんと離れたくないから。一生側にいれるように…」



「僕と結婚してください。」


そう言って彼女の言葉を待ち続けた。



彼女は、絞り出すような声で


「本当にいいんですか?まだ、姿を見せてもないし、会えたのも、これが最初だし、仕事ばかり、優先して時間もあまり作れなかったし、家事もできないし、年も離れてるし…こんなわたしでいいんですか?」


「うん、僕を好きになってくれたみどりさんがいいんだよ。僕も大好きだから。」



僕がそう言うと、彼女は泣きながら


「こちらこそ、結婚してください。。」


そう言って、彼女は僕の胸に飛び込んだ。

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