105 匈奴 ≪2≫



『史記』の作者である司馬遷は漢の武帝に仕えた身ですから、武帝と匈奴の戦いについては、かなり詳しく書き残しています。


『史記』の中で一番盛り上がるのは、秦の始皇帝の天下統一とか、その後の項羽と劉邦の戦いなのですが。それらは、当然ながら、司馬遷は生まれていませんので、伝聞や資料に頼って書くしかなかったことでしょう。


 しかし、武帝と匈奴の戦いについては、彼は戦場に行くことはなかったにせよ、ある意味では当事者としても深く関わってもいます。匈奴に捕らわれた李陵をかばって、屈辱的な宮刑を受けたことなどはその最たる出来事でしょう。


 『史記』において、始皇帝や劉邦や項羽の話も面白いのですが、作者の司馬遷が実際に見聞きしたであろう漢の武帝時代の話もおもしろいです。いや、登場人物たちの命をかけたリアリティな言動が、実際にあったのだと想像するとワクワクします。


 ただ、すでに漢王朝は安定していますから、どのエピソードも地味といえば地味なのはしかたのないことですが。




 先生が言われていました。


「史記を長年研究していると、書かれている文学的な内容の面白さでは満足できなくなりました。いまは、歴史書として読む解く面白さと、司馬遷がなぜ史記を書いたのか、そして司馬遷の人柄におおいに惹かれています」


 雑談中から拾った先生の言葉ですので、かなり自己流にまとめていることはお許しください。でも、最近、その先生の言葉がわかるようになったのですよ。




 司馬遷の目で見ている漢の武帝の時代。


 ああ、司馬遷を主人公にした華流時代劇ドラマとか、『キングダム』みたいな漫画があるといいのになあ。司馬遷をすまじきものは宮仕えの当事者として、ある時は反骨精神に燃え、ある時は淡々と仕事をこなし……。


 現代ふうに言うと、ワンマンな社長に仕える秘書室長。

 でも、ぼくは家に帰ったら、こっそり史記(社歴)を編纂していて、憂さ晴らしているもんね、うふふ。


 そんな感じで……。

 あっ、ついつい、小説書きの妄想が……。(笑)




 ところで、先生はいつも講座の終わりに「次回のテーマは何にしましょう?」と訊かれるのです。ある聴講生の希望で、次回からは、項羽と劉邦の時代と決まってはいるのですが。


 でも、なぜか、毎回の講座の初めにいただくレジュメのテーマを見ると、武帝!!なのですよ。

 

 コロナの前の講座の内容をまとめて、研究書を出版された先生。今回の武帝時代についても、いずれまとめて本にしたいと言われています。


 聴講生としては、気長に待つしかありませんね。


 そして、先生が「うっ」と言葉に詰まるようなお馬鹿な質問を時々しては、先生に刺激を与えてあげたいとも。まあ、なんてことを言っちゃって……。

 でも、先生、ネットは見ていないと言われていました。m(__)m




 あらら、まだ、書きたいことがあります。≪3≫に続きます。

 

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