④
俺が高校生になって二十日目。柚乃と詩乃と出会って二十日目であり、双子の勝負の日まで、後十日となった。
授業と授業の合間、スマホのゲームをしつつ欠伸をしていた俺に、愛が話しかけてくる。
「ねぇ、宮風くん」
「ん? どうした?」
「柚乃さん、最近授業中、ずっと寝てるよね?」
愛の視線は、今も自分の机に突っ伏して寝ているギャルっ娘の姿があった。
「詩乃さんも、最近わたしたちの教室に顔出さなくなっちゃったし、心配で……」
愛の脳裏には、眼鏡委員長キャラの転校生の姿が浮かんでいるのだろう。学校を休んでいるとまでは聞いていないので、姉と同様に、今頃教室で寝息を立てているに違いない。
愛の問いかけは、暗にお前は何か知っているんだろう? と言う疑問だ。愛は俺と双子の関係を知っているので、そこに思い至るのだろうが、俺が姉妹の頑張りをここで暴露するわけにもいかない。
「さぁ? 大変なんだろ。夜遅くまで」
「いげね関係(ただれた関係)……」
「いや、そんな関係じゃないから!」
「でも、顔色、そんなに良くなさそうだし……」
友達として、心配してくれているのだろう。自分の事ではないのに、愛のその優しさが嬉しくなる。しかし、柚乃と詩乃は、今自分自身の想いを賭けた、真剣な勝負に向けて、頑張っている最中なのだ。行き過ぎた気づかいは、かえってこの双子には邪魔になるだろう。
ここは心を鬼にして、俺は愛を遠ざける。
「二人は大丈夫だ。愛が心配するような事じゃないよ」
「まさが想太さん、もう二人ば手籠めにすてらんだね(まさか想太さん、もう二人を手籠めにしているんですね)……っ!」
「してないから!」
「……じゃあ、こぃがら(これから)?」
「その予定もない!」
まだ信用していない目をしている愛をなだめ、ひとまず予鈴が鳴ったので自分の席に戻らせる。これでやっと一安心かと思ったのだが、どうやら愛の忠告を、俺は素直に聞いておくべきだったようだ。
この日、理科室へ移動する際中。
――柚乃が、倒れたのだ。
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