第44話戦争終結後の会議

 今日は、戦いに勝利した連合軍の各代表者達で、戦後処理の相談をしていた。保障や犯罪者への対応等が決まり、最後に辺境国の跡地をどうするのか話し合っている。


 エルフ族代表コナーは根回しが上手く行ったのだろうか、少し嬉しそうな顔をしながらも真面目な声で発言した。

「辺境は我々人外のいる国や村から離れた場所です。今回このように辺境国が盗賊達の隠れ蓑になっていた事を考えると、ここにはきちんとした人外達を中心とする国を造る事が良いと思います。

 そうしないとこんなに広い土地です。盗賊達の棲家になる危険性がありますし、人間だけが集まってまた同じような事を繰り返すかもしれません。」


 魔人族代表ハッカも賛成する。

「そうですね。私もここに国を造るのは賛成です。

 今回辺境国にいるのが人間だけでなく人外が一緒に暮らしていたら、ここまで大きな事になる前に気が付いて対処する事が出来たでしょう。遠く離れていた為に気が付くのが遅れて、辺境国が盗賊の棲家になったり、人形の【ロウキ】への潜入と入れ替わりを止める事が出来なかった。

 【ラト】の誘拐事件にボーン一家が気が付かなかったらと思うとゾッとしますよ。人形の入れ替わりもたまたま人形との区別がつくようになったから良かったものの、そうでなければもっと被害が出ていたでしょうね。」


 竜族の炎は沈黙したままだったが、【ラト】の代表者ルミが発言した。

「私も賛成です。色々な種族がいる国が良いんじゃないでしょうか。議会制にして議題は投票で決めて行くような形が良いと思います。今の【ラト】や【ツリー】と同じですね。

 法律も3か国同じですし、新しい国も同じ方が良いと思います。

 国民の集め方はどうしましょうか。誰でもというと犯罪者や不穏な者達まで入ってしまいます。新しい国だと簡単に乗っ取られてしまうでしょうし、ある程度こちらで選出した方が良いのではないでしょうか。」


 コナーは発言をしていない骸骨族に促す。

「他の方はどう思いますか。骸骨族の代表者花蓮様。」

「私も賛成です。昔ここには【スピ】がありましたし。辛い思い出のある場所なので年配者は移住しないでしょうが、過去の大戦の後に生まれた者達や、今回の戦闘でここを野放しにするのが危険だと思っている者達の中から移住希望者がでると思います。

 それに、自分達の国が欲しいと思っている者達もいるでしょうから。」

 話を聞いていた、鬼族代表と幽霊族代表も頷く。

「鬼族と幽霊族も賛成です。我々の場合は移る者がいるかは分かりませんが、ここに人外の者達がいてくれると安心です。」

 最後に竜族代表の炎も賛成した。


 皆が賛成したのでコナーが話を纏める。嬉しそうに笑っている。

「では、ここに国を作る事は決定という事でよろしいでしょうか。

 法律や土地の割り振り等は、今回戦闘に参加した種族達で決めていくとして。住民は希望者を集めて審査をする形なら問題はないと思います。

 辺境国は魔法をたたき込んだ影響で、結構土地がえぐれてしまいました。大きな湖になってしまったところもありますが、まあここは観光に使えると思います。

 土地の整備は、魔道具等で行ってしまえばすぐに出来るでしょう。後は、転移門と飛行船ですが、今回は新しい国の誕生という事で【ツリー】からプレゼントします。」


 ここで話を区切って得意げな顔で皆を見渡すコナー。コナーはすでに【ツリー】からの支援を取りつけてきていた。代表達はコナーの手際の良さに苦笑いをしながら拍手をして褒める。

「ありがとうございます。いくつか提案があるのですが、この国は観光業に力を入れるのはどうでしょうか。後は、土地は無駄に広いし農業や工場関連も良いと思います。

 それと、国民として受け入れるのに用心して当分は人間を入れない方が良いと思います。他国と離れていますから人間を見張るのも大変ですし、彼らの国なら【ロウキ】があります。前回の大戦に続いて今回も人間が起こした戦争です、眼を離したらまたやるでしょうから目の届く範囲に人間は置いておかないと。

 新しい国を作るためのお金も【ロウキ】には一切出させない方が良いと思います。この国の設立には今後の事を考えて人間は一切関わらせない。

 100年後位かな、区切りも良いですし。その頃に【ロウキ】と同盟すればいいでしょう。」

 賛成の拍手が上がる。コナーは頷くと新しい国の詳細について皆と話し合った。


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