第45話辺境国の跡地

 数日後、辺境国の跡地に新しい国を造る事が発表される。この話は人外達の間に広がり、皆移住しようかどうしようかと話し合っていた。

 話を聞いて興味を持った瑠璃は、レオとマリーや淡雪達と一緒に新しい国になる場所を見に来ていた。

「ねえ、大きな池があるわよ。ここで夏泳げたら楽しそうじゃない。浮き輪に乗ったりボートも良いなあ。

 あっちの広い土地は工房区画だって、音とか煩いから住居と離れていていい感じね。岩場があるしロッククライミングとか・・・・・・。 皆には普通にできちゃうからいらなそうね。」

 微妙な顔で頷くレオ達。淡雪とマリーは2人で真剣に相談している。

「新しい国。好きな土地選び放題。大きい家貰える。良いね。転移門もある。」

「そうね、最初に良い場所を取ったら結構稼げるわね。家を建てて誰かに貸すっていうのも良いし。宿屋にして経営者になって、オーナーを雇えば仕事も楽だし。」


 瑠璃は簡易役場と書かれた所で、募集要項を呼んでいる。

「へえ、住民審査があるんだ。それなら変な人は結構はじかれそうね。ああ、駄目じゃん。人間は駄目って書いてあるよー。」

 残念そうな声を出した瑠璃の隣に男性のエルフがやってきた。

「いいえ、異世界人の方は大丈夫ですよ。次のページに書いてあるんです。

 初めまして、エルフ族のコナーと言います。カールがいつもお世話になっております。」

 コナーに言われてページをめくると、1ページ分を使って大きく異世界人は可能と書いてあった。

「初めまして、異世界人の瑠璃です。私の方こそ、いつもカールさんにはお世話になっているんですよ。」

 コナーを見たレオがカールをつっついている。

「ねえ、あれって君の国の代表の1人じゃん。なんでこんなところにいるの。」

「ああ、瑠璃が来たら便利そうなのが色々釣れそうだから、移住を勧めようと思って待ち伏せしてたんだよ。」

「そうなんだ、戦争終わったばかりなのに君たちの代表って暇なのかな。」

「いやいや、忙しいけど奴は優秀だから。どうやらここの国を担当するらしいよ。どういう形で入って来るのかは知らないけれどね。」


 こそこそと話しているカールとレオは無視して、コナーは瑠璃に移住を進めている。

「今この国は出来たばかりで、色々な種族の方に暮らしてもらいたいんです。

 瑠璃様も是非いらしてください。転移門があるので【ラト】や【ツリー】も行き放題ですし、ああ【ロウキ】もありました。

 この広い土地を活かして、観光業も発展させようと思っているんです。新しい国は無限の可能性を秘めていますからね。新しい国で新しい気持ちで新しい生活を始めるって素敵だと思いますよ。」


 コナーの話に瑠璃が食いついてきた。

「いいですね。私、まだどこで暮らしていくのか決めていなかったし、新しい国で新たに始めるのも良いかもしれません。

 住むとなると、観光客と住民達の区画は【ツリー】みたいに別れるですか。そうじゃないと、色々揉め事がおきそうですよね。」

「そうか、そうですよね。他に何かこの土地ならではでやってみたい事とかありますか。」

「やっぱり、砂漠というか岩が多いので緑を植えるのは欠かせないと思います。湖とセットにしたら綺麗かな。 あと、湖で色々遊べるようにボートとかキャンプ道具等を貸出して、そのお金で湖の保全や経費を賄うとか。管理人を置けば雇用枠の獲得と不審者の見張も出来ますね。

 ここでしか食べられないような美味しいご飯や街の清潔さも大事です。特に清潔は重要だと思います。遊びなら崖があるから、空を飛べる何かがあると良いですね。誰でも安全に飛んで楽しめる乗り物のような。」

 自分の欲望をとめどなく話す瑠璃と、横でメモを取っているコナー。

「参考になりました。ありがとうございました。是非、瑠璃様も新しい国の住民になって下さい。またお会いできるのを楽しみにしています。では、私はこれで失礼します。またなカール。」

 皆に挨拶をするとメモを握りしめてどこかへ向かっていくコナー。


 コナーが去ると瑠璃は考えていた。

「ここで暮らすのはいいかもしれない。何か仕事も見つかりそうだし、土地を買ったとしても数年は報奨金で余裕で暮らせそう。転移門があれば皆にも会いに行ける。

 決めた、私この国に住む。ところでこの国の名前ってなんていうの。」

 嬉しそうに住民希望者の欄に自分の種族と名前を書いている瑠璃。それを見ていた淡雪一家は顔を見合わせて頷くと、横で瑠璃と一緒に自分達の名前を書き出した。慌ててレオとマリーも書いている。

 勿論カールも書き出した。

「まだ決まってないんだよ。国の名前って難しいから、しかも今回数種族で決めているから決まらなくて、一時棚上げみたいだな。他に決める事が沢山あるし、最後の方に決定するんじゃないかな。竜騎士達も駐屯地を作るそうだよ。」

「意外と結構色んな種族がきそうじゃないか。友人のムーンも来るって言ってたし、バスンさんも魔人族の幹部を引退して新しい国でのんびり暮らすって言ってたよ。」


 皆と一緒の国で暮らしていける事に嬉しそうな瑠璃。

「私達で新しい国を作っていくんだね。住みやすくて楽しい国になるといいな。そしてどの種族であっても迫害を受けずに暮らせる国に。」

「そうね、瑠璃。結構色んな種族や【ムーン】の名前も書いてあるし。賑やかになるのは間違いないわね。ボーンファミリーからも、祖父と三男に複数の名前があるわ。

 ここの祖父は怖いのよ。強いし曲がった事が大嫌い。礼儀も重んじる商売人で、商売の修行は厳しくて有名なの。女性と子供には甘いけれど。」

「治安面や物資とか彼らがいると安心できそうだね。新しい国にすぐに乗り込むところはさすがだな。僕は農地と薬草畑も欲しいな。鶏も馬も皆つれていくからね。」

「そうね。私は服を作る作業場がいるわ、後レオは調合室もいるじゃない。庭も欲しいわね、皆でお茶を飲めるように。」

「2人とも、まだ土地買ってないだろう。それに審査に通っていないんだし。」

「審査は大丈夫だよ。僕達みたいな善人が受からないわけないだろ。カールは知らないけどね。」

 笑っているレオに言い返しているカール。皆楽しそうだ。

「賑やかになりそう。楽しみだね。」

 嬉しそうに言う瑠璃に頷くマリーと淡雪。

「さあ、決まったら皆早く帰って引っ越しよ。」

 瑠璃の言葉に賛成っと声を上げて皆自分達の家へと帰っていった。

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