第42話連合軍 開戦直前
辺境国が偽魔人村を襲ったことにより、いよいよ連合軍と辺境国との戦争が開始される。連合軍では各代表が集結して作戦会議が開かれていた。
「偽魔人村の襲撃の失敗、【ロウキ】の企みが失敗。追い詰められた辺境国がいよいよ動き出す可能性があります。兵士達はいつでも出撃できるように待機をお願いします。
今回の作戦について、エルフ族代表コナー様が説明します。よろしくお願いします。」
1人の若いエルフが立ち上がると説明を始めた。
「エルフ族代表のコナーです。よろしくお願いします。今回の連合軍の構成を発表します。
辺境国を取り囲む兵士達の前方は、魔人族、竜族、エルフ族の合同部隊です。後方に獣人族、骸骨族、竜族の兵士達が配置されます。
辺境国内の魔道具が無効化されたら、辺境国の潜入部隊から合図があります。
合図があったら、魔人族、竜族、エルフ族が一斉に攻撃魔法を放つ。その後、獣人族、骸骨族、竜族が辺境国に突入。魔人族とエルフ族は辺境国から逃げてくる者の対処と味方の支援をお願いします。
今回の戦争では辺境国だけでなく似たような考えを持っている全員に我々の力を見せつけ、こんな馬鹿な事を考えても無駄だという事を徹底的に頭の中に叩き込みたい。このような考えを起こす者達の心を潰す為にも、圧倒的な力の差を見せつけて勝利します。
戦争開始から終了まで数時間で終わらせましょう。細かい作戦は各部隊の隊長にしたがってください。」
コナーの話が終わると各部隊は配置に着き待機する。隊長からコナーの話を聞いて、全力で叩き潰すとやる気に満ちている兵士達。
魔法を使う部隊は、それぞれの立ち位置や魔法の出すタイミング等の連携を確認している。攻め込む攻撃部隊も、一緒に連携攻撃の訓練をしたり作戦の再確認をしていた。支援部隊の骸骨達は魔法を付与したり薬の作製をして補給の準備も万全だ。
辺境国の者達が逃げてくる予定の隠れ場所や避難所には既に罠が張られている。竜騎士団と【ラト】の兵士達がいくつかの班に分かれて、それぞれの場所で待機していた。その後方には念の為【ラト】の治安維持部隊の裏組織が、必要な支援ができるように待機している。
作戦本部には竜族の代表の炎とエルフ族の代表コナーがいた。2人は周囲の状況を確認しつつものんびりと話している。
「いよいよですね。これで盗賊と人形達を一気に潰せます。人形と人間の入れ替えだなんて恐ろしい事を考ついたと思いますよ。見分け方が分かって本当に良かったです。
【ロウキ】の方は幽霊族達のお陰で人形はすべて排除されました。今人形の研究を骸骨族の方で進めています。」
「そうか、我々竜族の人形まで作られていたら厄介だったな。我々の能力が使えなかったとしても、見分けがつかないとなると、どうなっていたか分からないぞ。
骸骨族の解析結果が出たら、その対応策も協議しないといけないな。」
「そうですね。」
炎がふと思いだしたようにコナーに尋ねる。
「そういえば、エルフ族の差別主義者達の組織がこの機会に【ツリー】で暴動をしようとしているが、あれは今泳がしているのか、後で一斉に捕縛するのか。」
「そうです。出て来やすいように優しい我々が舞台を整えてあげたんですよ。差別主義者は全員あぶり出して捕縛する予定です。裏組織の隊員達から有給休暇の申請がでていて休みが取れないなら転職するとか言いだしたんですよ。今回の逮捕で一斉に捕まえて牢に放り込まないと、優秀な裏組織の隊員が減ってしまう。業務を減らして絶対に休暇を取れるようにしないと不味いんです。」
話を聞いていた炎は笑っていた。
「なるほど、我々の所はそんなことにはなってないがな。」
「竜とエルフでは体力が違うじゃないですか。1人で受け持つ時間が長いから、休暇も取りやすいでしょう。
話は変わりますけど、辺境国の跡地ってどうするんでしょうか。」
「そうだな、魔法を大量に打ち込んだらほぼ更地になるだろう。何でも作れるが、どうだろうな。
人外にとって因縁の土地だから、またこの地に国を作る事はしなそうだが。距離が離れていて目が届きにくいから、放置はできない。今回のような事になっても困るし、出来れば人外がいる国か街を置いておきたいが。国となると、どこが主導権を握るのかという問題も出て来るしなあ。」
「辺境は他国と離れすぎていますからね、やはりきちんと国を置いて交流しておかないとまた同じ事が起きかねません。
エルフも獣人も人間も国を持っている。昔あった【スピ】を思い出して辛いという気持ちも分かりますが、人外達が主体になる国が必要だと思いませんか。人外だけでなくて、異世界人や【ムーン】も自由に住めて交流できるような国でもいいですね。
攻め込まれても対応できるように、騎士団と治安維持部隊も作ればいいのではないかと思います。【スピ】にいた人外達は強かったせいで油断していた所もあったのではないでしょうか。
他にも、他国との間に中継地点となるような街を作るとか、対策を立てておくのも大切でしょうね。
ついでに周囲の環境を利用して観光地が欲しいです。周りに何も無い広い土地がありますからね、色々作れそうじゃないですか。」
「そうだな。ところで最後の観光地以外、似たような話を最近聞いたばかりなんだが。」
「そうなんですよ、よくご存じですね。そういえば竜族が参列していましたね。彼女の話を聞いて良い案だなと思ったんですよ。
最後のは案は違いますけどね。以前の【スピ】のようにするんじゃなくて全く違う風に作り替えちゃうのはどうでしょう。街並みとかも。国名も名前を変えてしまえば良いんです。
住民も最初は人外や知り合いのみで、国が整って来たら人外以外でも許可するようにして。
ま、国作りだと法律の制定とか大変だし、生まれたての国は変なのが寄ってきますから、その対処も考えないといけないですけれど。色々と便利な人材が彼女の周りにいるなと思っいまして、何とか上手く纏まるように、陰からも表からも支援してあげてほしいんです。」
コナーの話に眉を顰めている炎。
「つまり、彼女を国の代表の1人として担ぎ上げるつもりなのか。本人が嫌がりそうだぞ。」
「勿論、嫌な事はさせません。周囲も煩そうですし、本人にもきっぱりと断られそうです。
大丈夫ですよ。ちゃんと国を運営できそうな人達が周りにいますし、色んな種族も釣れそうなのでバランスも良い。素敵な国になりそうじゃないですか。」
「本人がやりたいのならば、竜族は全力で支援する。お前まさか、さっきから各種族の代表と話していたのは、この話なのか。」
「そうです、せっかく代表達と秘密裏に相談できる機会なんです。利用しないと勿体ないです。
彼女の事は、一緒にいる友人達に任せておけば大丈夫ですよ。変なのは殆んどが彼女に近づく前に排除されていそうじゃないですか。」
複雑そうな顔の炎を見てコナーは笑うと、じゃあよろしくと言って去っていった。次は獣人族の代表を狙っているのか笑顔で話しかけている。
「コナーは有能な奴だからな、瑠璃様を利用しようとするのも当然か。嫌がる事をさせないように見張らないといけないが。
新しい国造りに彼女達が係わったら、人外達には過ごしやすい国になりそうだな。異世界人だが瑠璃さんは人間だし種族間のわだかまりの解消も期待できそうだ。
うーん、竜族も積極的に関わるように皆に話しておくか。」
戦争準備の確認と皆にコナーの話を伝える為に、炎は足取り軽く仲間達のもとへ向かう。
開戦前から勝利を疑わない人族の代表達、すでに開戦後に向けて動き出していた。
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