第12話人外の魔法と差別集団
一息ついた瑠璃は魔法に関して質問する。
「それにしても、魔法って色々あるんですね。」
「そういえば瑠璃さん、門の蔓を見て、「子供の高い高いに使えそう」って言ってたね。」
「へえ、結構良い案じゃないかな。魔力量の操作訓練になるぞ、竜騎士に提案してみたら?」
「嫌です、絶対白い目で見られますよ。」
「いやいや、楽しみながらできて、子供達によさそうな練習だ。俺から言ってもいい?」
「私の案じゃなくて、カールさんの案にしてくれるなら良いですよ。」
「うん、じゃ友人に話してみるよ。」
2人のやり取りを見てレオとマリーは笑っていた。
マリーが簡単に説明してくれることになった。
「魔法も色々あるのよね、さっきの話で出た鬼族の魔法とか。各種族の基本的な魔法の話しをしておくわね。
私達骸骨族は、物質に魔法を付与できるの。
一般的な物が、物に温冷効果を持たせたり、物に空気を出させて温度調整もつけたり、水を貯めたタンクから家の水道に水を出すとか、自動サイズ調整とか、簡単な物は本当に沢山あるの。
専門的だと、防御の魔法をつけたり、姿を隠す布、自動修復、武器に炎や風や氷等の魔法を纏わせたり、魔力感知、対象者に特殊な魔力発動機を付けて移動を監視するとかもあるわよ。
付与するときは、水・風・火・光・闇の魔法を単独だったり組み合わせて付与したり、自分の閃きで新しい事が出来るから楽しいわね。
生活にも戦闘にも、どちらにも利用できて便利だと思うわ。
エルフと魔人は似ていて、魔力を外に放つって感じなの。実際に魔法が見えるのよ。本人の特性によって出せるものが火・水・風・雷・氷になるの。魔力量も個々違うわ。
魔法の威力は、本人の魔力量で変わるんだけど、少ない魔力だからと言って不利なわけじゃないの。特性が火と水で熱湯ボールを出したりとか、使い方しだいで幾らでも魔法の威力は変わるのよ。。
エルフも魔人も生活は基本魔道具で魔法は戦闘時ね、今は盗賊討伐の時に使っているの。
後エルフには少人数だけど、植物に干渉する力がある人がいるわ。門の蔓を扱えるような人ね。
あれは、なかなか凄いわよ。戦闘時じゃないなら感動するわね。
ついでだけど、武器は種族によって分かれてるの。魔人は次郎さんの影響で柔術に短剣や槍を好む人が多いみたい。エルフは剣と弓ばっかりよね。」
頷きながらカールが言う。
「骸骨は剣と盾が好きだよね、剣に炎を纏わせて格好つけてるのがいるよ。」
「いいじゃないか、格好いいだろう。僕は氷を付けているよ」
カールとマリーは無言で見つめている・・・・・・。
「氷って折れそうですけど大丈夫なんですか? あっその為の盾なんですね、盾で殴れば凶器になりますもんね。」
悪気はない瑠璃、爆笑するカールとマリーに、泣きそうな顔のレオ。
「強化してあるからね、自動修復もかけるし折れないよ、盾は殴らないからね。」
悲しそうな顔のレオに、申し訳なさそうな瑠璃。笑いの止まらないカールとマリーをレオは冷たく睨んだ。拗ねているようだ。
笑い終わったマリーが説明する。
「まあ、多分強いのね。氷の剣。折れそうで折れない・・・・・・。
ふ―、笑いすぎて苦しかった。息が出来なくなるかと思っちゃったわよ。あのね瑠璃、骸骨でも普通の剣で戦う人の方が多いわよ。」
同じく笑っていたカールだったが不思議そうにマリーの事を見た。
「そういえば、レオの剣の事はマリー知らなかったんだね。」
「レオの早朝訓練の時は私寝ているもの。逆に私は夜訓練しているのよ。」
「レオさんやマリーさんも訓練しているんですね。」
「ええ、昔は人外と魔人の国【スピ】があったのよ。昔の辺境国に侵略されて滅ぼされた国なの。その事がきっかけで私達骸骨族も皆訓練は欠かさずにやっているわ。」
「まあ、100年以上も前の話しなんだけど、何かあった時の為に今でも訓練はしているんだ。」
「そうだったんですか、国は再建されなかったんですか。」
低い声で悲しそうに答えるレオ。
「国の再建は出来なかったんだ。人外の数が減りすぎてね。残念な事に国が再建出来る位の人外が生き残っていなかったんだ。
辺境国が襲った時に、毒を飲み水に入れたり、伝染病患者を【スピ】に放ち病人が増えて混乱したところに、火をつけ街を燃やしたんだ。最後のとどめは、盗賊や人身売買組織が乗り込んできて生き残っていた人外を殺したり捕まえて売りに出したりしたんだよ。
本当に酷い状態だったそうだよ、生き残れた人達は地獄のようだったって言っている。」
カールも険しい顔で話を続ける。
「エルフ達が【スピ】の異常に気がついて助けに行ったときには、もう滅ぼされた後で、連れ去られた人外や売られていった人外の救出しか出来なかった。戦い自体はエルフ達があっさり辺境国に勝ったんだよ。」
「今の辺境国は一度滅ぼされ、新しくできた国なの。人外達が辺境の土地を嫌がって戻らなかったから、【スピ】があった場所も、今の辺境国の一部になっているわ。」
カールが雰囲気を変えるように話を変えた。
「そうだ、エルフの問題組織も一応話しておこう。」
「瑠璃さんは大丈夫だと思うけれど、エルフの中には、自分達が特別だって思っている集団がいてね、
選民意識や異常な誇りを持っているんだ。
彼らは、人間・獣人・【ムーン】達を”獣”と呼んで、見下して差別的な言葉で罵倒したり、時には暴力をふるっているんだ。もう迫害集団だな。
勿論、治安兵や竜騎士とか住民も見かけたら止めに入ったりするけれど、なかなか無くならなくってね。」
「住民の中には恨んでいる人もいるから、放置する人もいるわよね。」
「でも、差別や迫害を放置すると街が荒れるし、やられた相手が復讐に無関係の人を襲ったりしたら大変だからな。今、国を挙げて対応する為に、部署を作ってその部署が対応してるんだ。」
「難しい問題ですよね。そういう事を気にしなくていい、住みやすい国があったらいいのにな。自分本位やトラブルメーカーじゃなくて、互いを尊重して思い合える人達と暮らせる国。」
「それはいいね、叶えるなら小さな国が良いよね。大きくなると色々問題が出るから。」
「そうね、今は魔道具もあるから出来るかもしれないわね。」
妄想の話なのに新しい国の具体案を話し出した4人。
「小さな国って100人位の規模でいけるのかな。」
「どうだろう、最初は少なくてもいいんじゃない。まず方向性の一致を考えないといけないだろうし。」
「確かに方向性は大事ですね。どういう国か、大きな部分を決めないと国が成立できないですよね。場所の選択、周辺国への告知や同盟国選びとか。」
「僕は巨大な畑と料理研究所とか作りたいな。それだけだとお金が不安だから、薬の研究も必要だろうね。」
「俺は魔道具製作所とか面白いと思う。色んな種類の魔道具が作れそうじゃん。人気はやっぱり美容だろうな。」
「それって、ほぼカールさんの為の美容品店になりそうですよ。」
「いっそ、土地を見つけて好きな様に国を作る方が良いのかもしれないな。」
そんな皆を見て微笑んでいる瑠璃。
「そうですね、なんだか楽しそう。もし帰れる方法が見つからないなら、暮らす場所を探すのが大変そうだなあ。いっそ本当に、国を作って皆で暮らせたら楽しそうだな。」
瑠璃は皆には聞こえないようにそっと呟いた。
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