第32骨「角ざんまい!死霊使い!」


 真剣に、真摯に、装備を考えよう。そう思った時、俺の目に最初に飛び込んできたのはダブルアクセルの神々しい角だった。

 これは、昔から俺の家にあった懐かしいものだ。まさか、こんなところでもお目にかかれるとは……


 黒瀬の見つけたこの逞しい角は、クーズーと呼ばれる動物の角である。クーズーはウシ科の哺乳類で、コルクの栓抜きのようにねじ曲がった角が特徴だ。その大きな角はひしひしと、生命力の強さを感じさせる。


 まずはこの角が付いた頭部装備を手に入れて、内心テンションが上がる俺。なんども着脱し悦に入る姿は、周りからみると不気味に思えたことだろう。しかし、納得のいく装備が手に入ったのは良い事だ。


 さて、次なる装備を探そう……


 そう考えているところにまた次なる角が目に入ってきた。やっぱり、自分が知ってるものだと注視しやすいのだろうか。行き交う人々は全く気にせずにその角を通り過ぎていくが、俺にはその角が呼んでいるように思えた。


 次なる俺の装備候補は、ゲムズボックの角を使った武器だった。先ほどのクーズーの角とは対照的な真っすぐ伸びた角は一撃で目標物を貫けそうな鋭さを持っている。

 ゲムズボックはオリックスとも呼ばれ、オリックスはギリシャ語で先のとがった斧を意味する。オリックスを剣と表現する詩人もいたほどだと言う。


 見たことのあるものばかりを集めるのは賛否の分かれるところかもしれないが、この元は生き物の装備を集めることは死霊使いである黒瀬にとっては好都合であったことは言うまでもない。


 骨や角を身に付けておくことは、黒瀬にとっては予備の戦力確保と言い換えることができる。有事の際に降霊術さえ行えば、その生き物を自由に使役できるからだ。


「まあ、武器が眷属になるってのもカッコイイよな」


 そう自分に言い聞かせてしばらく町を回る黒瀬。他の皆はうまく装備を見つけられているだろうかと心配になっていたが、自分の身支度も済んでいないので深く考えることをやめた。


「あっ……」


 再び目に留まったのは角。こうやって角や頭骨ばかりに目がいくのは、自分の家にあった頭角、剥製の印象が強すぎるせいだ。これが奏功するのかどうかはこれから分かることだが、今回は自分の中でも仕方ないと割り切るしかない。


「これは、ガロアの角かな……」


 ガロアはウシ科の中で最も大きな体の動物だ。体重は1トンを超えるものもあり、全長は三メートルを超える。肩高は2メートル近く、ガロアを目の前で見るとその大きさに圧倒される。ガウルが人を殺した例もあり、そのがっしりとした体、重厚な角から繰り出される突進を受けると無事ではいられない。


「この盾なら、安心だ」


 ガロアの角があしらわれたその盾は、普通の盾よりも頼もしい感じがした。もうここまできたら、俺の知っている角を全身に身に付けてご利益を得ようと考えた俺は即購入することを選んだ。


 こうして選んだ角装備は、クーズーの防護帽ヘルム、ゲムズボックのつるぎ、ガウアの盾。どれもいざ装備してみるとしっくりとなじむ感じがする。


 これらの三つはなんとなくカッコイイので、黒瀬頼央三種の神器と呼ばれた(自分で呼んだ)。


 俺の準備は万端、待ってろラストダンジョン大屍魔窟マレドードゥン




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