第27骨「モーマンタイだ!死霊使いと御一行!」

「いや~ほんと、死ぬかと思ったわ~……」


――ってあたし、死んでるんでした!


 いつものジョークを決め込む咲愛をまったく何やってるんだとツッコミを入れる黒瀬。


 正直不安だった蘇生だが、三度目の蘇生も上手くいったので、とりあえず一安心だった。


「莉愛は一体どこに……」


 咲愛が指さした方向に爆裂した莉愛の亡骸が放置されていた。


「酷い……一体誰がこんなこと……」


「自滅よ、ちなみにあたしを巻き込んだ手の込んだ自殺」


 咲愛はやれやれと言った様子で、莉愛だった塊の方を一瞥する。


「いっつも、莉愛は無茶しすぎるところがあるから……」


 結局、莉愛の作戦は二人が命を落とす結果となったが、この爆発があったおかげで黒瀬とピザピンが救出に来ることができたことを考えると無駄ではなかったと言えるだろう。


「ま、とりあえず蘇生するか……」


 いつものように詠唱し、むくろをにもう一度生を与えることに成功する俺。何度も行ったことで、徐々に手馴れてきた実感があった。


「マスター、今回最速タイム出ましたよ!」


「マジか! 計測ありがとう、我が眷属よ」


「お褒めに預かり光栄にございます」


 咲愛も俺の機械的に着々と蘇生を行うさまを見て、冗談を言ってきた。やはり、咲愛同様とりあえず、三度目までは難なく蘇生できるようだ。


「マスター、さんきゅ~!」


 莉愛は、こうしてまた蘇れることをさも当然のように全く動じることなく蘇生した。まあ、もう三度目だし仕方がないか。


「マスターが来てるってことは私たちの作戦は上手くいったってことよね!」


 嬉々として話す莉愛だったが、残念ながら莉愛の作戦自体は失敗に終わっている。


「ま、細かいことはさておき、この謎の生き物も無事倒せたみたいだし、一件落着ってやつね!」


 作戦が失敗に終わったことを意地でも認めたくない莉愛は、さっとこの話題を終わらせようとしていた。


「まあ、まあ、二人が無事に戻ってきたことだしそろそろ外に出るか!」


 莉愛の言う通り、事実この砂鯨問題は解決されたようなもので、後はこの鯨から離れて再び次の目的地、砂城螻馘アンモスサッビアを目指す!


「にしてもマスター、どうやってこの生き物の中に入ってきたの?」


 不思議そうな目でこちらを見つめる少女咲愛、俺は外の様子について咲愛に伝えることにした。


「どうやってて、な、ピザピンちゃんと俺と、正面から……」


 そう言って自分たちが入って来た方向へと戻ろうとすると、


――ビクン、ビクン!


「わっ! 動いてる!」


 先ほどまで石化していた体が徐々に動き始めていた。筋肉が痙攣けいれんのようなことを起こして跳ねるように元気よく動いている。


「早く、ここから出るのじゃ!」


 危機が迫ったのが判明するや否や、即、退散の指示を出すピザピンちゃんの決断の速さは見習うべきだろう。


「いやでも、まだ……」


 俺が気にしていたのは、この砂鯨の体内で朽ち果てた無数の残骸。無念の死を遂げた人たちの骸、夢半ばで倒れてしまった人たちの亡骸。


「救えなくて……ごめん……」


 あの積み重なる数々の骨を思い出し、申し訳ない気持ちになる黒瀬。


――こうやって俺は、逃げる理由を求めていたのだろうか。これほどの人間の人生を、数多の他人の人生を、もう一度強制的に再開させて、自らが責任を持つことから逃げたかったのだろう。


 だとしたら、目の前の双子は? 目の前の元王族は?


 彼女たちだって、安らかに眠っていたのかもしれない。それを無理矢理起こしたのは紛れもない俺だ。考えても仕方ないが、俺は少なくとも彼女たちの人生の責任を取らないといけない。それだけは忘れちゃいけないんだ……


 砂鯨の体内を駆ける最中、俺はそんなことを考えていた。


 俺たちは砂漠で出会った状態、つまり再びフォーマンセルで行動することとなった。これでまた振り出しに戻った。


 俺たちは、鯨の体内で死んでたまるものか!




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