第20骨「ピンチ、ピザピン!死霊使い!」
「ピザピンちゃん! 砂鯨の弱点とか分かったりしないの?」
「余が生きていたころから、砂鯨とは戦ったことはないのじゃ……倒す方法など、分かりらないのじゃ……」
力になれず申し訳ないと
「まあ、手あたり次第やってみるしかないか……」
俺は仕方なく、まずは久々の攻撃魔法、
「って言ってもどこにいるかすら分からないもんな……」
バシュンと音を立てて砂の中に染み込むように、俺の繰り出した魔法は無惨にも消えていった。
「ピザピンちゃん! ちょっと力を貸してくれ!」
――
幼女に似つかわしくないサイズの大槍が、突如として現れ、ピザピンはその小さな両手で思い切り地面にぶっ刺した。
「串刺しなのじゃああぁぁ!」
古くから刑罰の一つとして串刺し刑は行われていたようで、ピザピンの動きが手馴れていたように見えたのは、実際に何人もの人間が処罰されるところを見ていたからだと言える。今まで砂鯨から真っ向勝負を挑んだことのなかったピザピンは、積年の恨みを晴らすかのように容赦なく、一切の手加減なく、地中にいる砂鯨を突き刺した。
見えない砂鯨が、ピザピンにははっきりと見えているかのように憎しみを所かまわずぶつけていた。
「刺して、刺して、刺すのじゃ!」
下手な鉄砲数打てば当たるように、大槍も何度も刺せば、目的の砂鯨に辿り着くはずだ。俺たちは力の限り、手を尽くすことにした。
「手応えアリ! さすがアイティオコピン家を継ぐ余の力じゃ! 砂鯨の捕鯨など、容易いのじゃ!」
自画自賛する元王族は、しばらく空振りを続けていた結果ついに砂鯨に槍が届いたようだった。地震が起きた時のようにグラグラと揺れ出し、砂の中から大きな尻尾が現れた。
「これが……砂鯨……」
圧巻の大きさだったため、俺は思わず見惚れてしまった。こんなに大きな生き物がこの世界にいるなんて……まだまだ冒険し甲斐があるってもんだ!
「ピザピンちゃん大手柄だ! 地中から出してしまえばこっちのもん……」
そう思っていた時期が俺にもありました。正直、俎上の魚、地上の鯨なんて考えで姿さえ見えれば余裕で倒せるだなんて甘くみてました。
「え? これ無理じゃね?」
砂鯨は俺の想像していた8倍くらい大きかった。こんなのに呑み込まれた二人を助けようなんて無理だったんだ、こんな化け物に対抗しようと言う考えが愚かだったんだと思わせるには十分の
「主、今更怖気づいてどうするのじゃ! 何か策があるんじゃろ!」
希望を捨てないピザピンの姿を見て、黒瀬も頑張ろうと奮起できれば良かったが、沈んでしまった気持ちはそう簡単に戻らなかった。どこに攻撃したら良いのかさえも皆目見当がつかない。目の前に一面真っ黒で強固な壁が一瞬にして現れたようなもので、打開策はないかのように思われた。
「主! しっかりするのじゃ! 主!」
ピザピンちゃんが俺を呼ぶ。俺の頭の中では撤退の二文字が浮かんでいた……
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