第19骨「洞窟探検!今湊姉妹!」
「は? は? なになになに?」
「咲愛! 私たち、また死んじゃうの!?」
突然砂鯨に呑まれ、視界が真っ暗になるのを体感した二人。今自分の身に何が起こっているのか理解するには情報が不足しすぎていた。
「これって、あたしたちどっかに落ちたってこと? でも落ちてるって感じはしなかったけど……」
「私は砂の中の洞窟的な場所に入っちゃったんだと思う……」
灯りのない世界で声だけを頼りにお互いの存在を、そして現状を確認し合う二人。二人が予想しているよりも、置かれている状況は深刻であることをまだ気付くことができない。
「ねえ、こんなところだから言うけどさ、莉愛ってさ……マスターのこと、どう思ってるの?」
咲愛が唐突に妹である莉愛に質問する。表情を読み取ることはできないが、声色からふざけて言っているのではないことは分かった。
「何? 修学旅行の夜みたいに恋バナしようってこと?」
――そんなの、マスターはただのマスターよ。
莉愛はこの前の発言から、咲愛に対して少し後ろめたさを感じていた。だから、ほんとはもっと上手く話をしたいのに、それができない自分をもどかしく思った。
「そう言えばさ、蘇ってから二人でこうやってゆっくり話すのって初めてじゃない? いっつもマスターがいたし、いっつも魔獣が襲ってきたりしてたし、なかなか話せなかったって言うか……」
「たしかにそうかもね……昔はもっとたくさん話してたのにね」
咲愛も莉愛も生前の人生に思いを馳せていた。自分が死ぬ前はただ二人で、冒険をしていた……?
「あれ……あたしたちって、なんのために冒険してたんだっけ……」
「咲愛もなの? 私もどうも思い出せなくって……」
転生後は記憶を全て引き継げると言うわけではないのだろうか。はたまた、この記憶の混濁にこそ、今湊姉妹が狙われる理由があるのか、それは彼女たちには分からないことだった。
「もしかして、あたしたちの生前の記憶にこの頻発する魔獣案件のカギがあるのかもしれないね……」
「でも、思い出そうとしても
自分たちの記憶が何者かによって制限されているかもしれないと言う疑念を持ったところでこの話は閉じられた。なぜなら、自分たちの体がいつの間にか傾き始めたからだ。
「ちょ! あたしたちなんか変なところにきちゃってるじゃん!」
「この洞窟……動く!」
洞窟なんて生易しいものじゃない。自分たちの体がぐるりぐるりと回転し、壁と思われる箇所に何度も激突する。砂と一緒に混ぜこぜになる様はまるで洗濯機の中の洋服の気持ちを体感しているようだった。
「人はこうやって色々と揉まれながら成長するのね……」
「莉愛! 冷静になってる場合じゃないって!」
ひとしきり転げまわった後、二人は自分たちが立っている場所がどんな場所なのか理解することとなった。
――グオオオォォォ-オオオオオン!
凄まじい空気の亀裂と共に、壁と思っていた壁面がビクビクと振動し、ブヨブヨと揺れ出した。自分たちが何か得体のしれない生き物に食べられてしまったと言うことが鮮明に分かった。だが、分かったところで二人は為す術無く、その場で立つことが精いっぱいだった。
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