第12骨「事情聴取だ!死霊使い!」

「いや……その……僕たち、知らなかったって言うか……」


「言い訳をしても無駄だ。ここ最近、《エルンブ》でむやみやたらに魔法を使用する事件が頻繁に起こっている。一連の事件も君たちがやったんじゃないのか?」


 もう俺たちが犯人だと決めつけて男は詰問してきた。これが平和の使者のやることかよ!


「なるほどね、私たちの物語は留置所編に突入するわけね。さらには獄中編、脱獄編に繋がるわけだ。マスターはアウトローな世界観の物語をご所望ってわけね」


「いやいやさせねーよ。そんなことさせねーから」


「なんなら、私がマスターと咲愛の分までカラダで払ってあげといても……このパーティの中の淫乱担当が性処理と称して尻拭いしとくよ♡……なんか尻拭いって言葉エッチだね……♡」


「マスターが甲斐なしのせいで、莉愛ちゃんが……」


 しくしくと泣きまねをする咲愛。莉愛は相変わらずわけのかわらないことを言っている。淫乱担当ってなんだよ。


「あの、僕たちがその犯人ってのを捕まえてくるってのはどうでしょうか?」


 よし、これで俺たちの罪は晴れるし、この《エルンブ》の町の秩序も保たれる。良いことずくめだぞ。我ながらナイスアイデアだ。


「ダメです」


 俺たちを拘束した人物は平然と真顔でそう言ってのけた。


「いや、僕たちが犯人を……」


「ダメです」


 まあ、もちろん向こうの立場になれば犯人をみすみす逃がすことに他ならないわけだから、こんな見え透いた弁舌で騙されまいと言うことなのだろう。


「さあ、さっさと檻の中で大人しくするんだ。禁止区域で魔法を使っていたことは事実なんだから」


 ちょっと待ってくれ。俺、16歳で前科持ちになるのかよ。久しぶりのシャバの空気だぜ(古い)って言うセリフ言わないといけないのかよ。


「ふっ、あたしたちはとっくに久々にシャバの空気だぜの気分味わってたけどね。死んで土に埋まってたわけだし」


 こんなときにボケなくてよろしい。咲愛をたしなめた後、俺たちは法の下然るべき処置を受ける覚悟を決めかけていた。冒険しょっぱなから出端を挫かれた気分だぜ……


――ドーン!


 大きい爆発音が聞こえたかと思ったら、俺たちが話をしていた施設の壁が破壊されていた。まったく、この町は物騒だ。


 って、なんだこれ。


「あー、これまた魔獣じゃん! あたしたち魔獣退治専門家とかじゃないんだけど……」


 キマイラの次はオオカミだった。自分の身長の三倍はゆうに超える大きさの狼。大きな牙に、鋭い目、赤ずきんもびっくりの獰猛な獣。


「あーこんなのに食べられたらひとたまりもない……」


――な……


「ちょ、早っ」


 俺たちが狼の姿に見惚れている(呆然としている)間に、ばっくりと大きな口を開けて狼が今、湊咲愛を丸呑まるのみにしてしまった。


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