第11骨「戦闘準備だ!死霊使い!」

 朝、昨日は疲れていたこともあって少し気が塞ぎがちになってしまっていたが、朝日を浴びて、今日も一日頑張ろうと言う活力があふれ出してきている。


「あー、3人で大屍魔窟マレドードゥン攻略なんて、ほんとが折れるよね」

「粉砕身の覚悟で臨まないといけないね、ほんと。でも折り損ってことにはならないようにしないといけないね」


 咲愛も莉愛もこれでもかと言うくらいにを強調している。それもそのはず、彼女たちは昨日までだった少女。俺の力でもう一度この世に顕現したのだ。


「さっきから骨姉妹、あからさまなんですけど」


「骨姉妹ゆーな」

「だれが骨姉妹じゃ! 抜きにしたるかんな!」


 バシバシと拳を胸の前でぶつけ交戦状態に入ろうとする咲愛。ほんとどうして俺の最初の眷属はこんな双子姉妹になってしまったのだろうか。


「んで、マスター、私たちはどうすればいいの?」


「いつでも戦闘態勢、いつでもどこでもだれでもやれちゃうよー!」


 2人を俺は昨日蘇生したものの、死霊使いネクロマンサーとしてどうやって戦うのかと言うことはイマイチ分かっていなかった。くるりとスカートを翻す少女、今湊咲愛自称炎技を使う近接格闘家。


「咲愛、炎熱脚烈ブレイズキック!」


 咲愛のか細い脚から、万丈の焔が大気炎を上げて繰り出された。辺りは火の粉が飛び散り、そこであたかも大きな爆発があったかのように錯覚させるほどのエネルギーが充溢していた。


「思ったよりすごい!」


「ね、炎技得意って言ったでしょ」


 こんな大技があったなら、どうしてあの昨日の魔獣にやられたりしたんだと思ったが、この技は準備に時間がかかるため遠距離支援型の莉愛と相性が悪かったようだ。


「姉さんの技、なんか威力上がってない?」

「やっぱりそうだよねー、マスターのおかげかな?」


 どうやら死霊使いの能力の一部に眷属の潜在能力を引き出す力があることが分かった。生前よりも高火力の技を撃ち出せるということで、当の本人も目に見えて強くなったことを実感したようだった。


「ありがと、マスター!」


 にかっとはにかむ咲愛のその姿は純粋無垢な少女そのもので、本当に生前から可愛らしい少女であったことを彷彿とさせる。


「次は私ね!」


 待ちわびたと言わんばかりに莉愛が右手を思い切り開いて前に突き出した。辺りは先ほどと打って変わって静寂が支配し、瞬き一つ許されないような緊張感が漂っている。


「莉愛、冷徹氷塊アイスダウン!」


 周りの空気が一気に凍結し、ピキピキと音を立てて凍り付いてゆくのが分かった。そして目の前にあった大きな木からみるみる生気が失われてゆき、遂には真っ白に成り果てる。今まで生の状態にあったものが死の状態に変わったと言うことだけが無残にも伝わった。


「私も今までよりも強くなってる! 私すごい! 私天才!」


 有頂天でぴょんぴょんと飛び跳ねながら喜ぶ莉愛。自分で天才と言う者に碌な奴はいないと言うことを伝えようとも思ったが、あまりに嬉しそうなので今日の所は天才と言うことにしておいた。


なんかこうやってのんびり旅をするのってイイよなーなんて考えながら、俺は二人の美少女にすっかり見惚れていた。


――しかし、平凡な日常ってのは脆く、いとも簡単に崩れ去るのが常である。


「ちょっと、君たち。冒険者? ここ魔法禁止区域なんだけど……」


 俺たちはあっという間に御用となった。


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