第7骨「揉んじゃいました!死霊使い!」

 今湊咲愛いまみなとさくあ、前世妹、現世姉。好きなものはオムライス、肉弾戦が得意で、生前は物理攻撃担当。


 今湊莉愛いまみなとりあ、前世姉、現世妹。好きなものはハッシュドビーフ、遠距離攻撃を得意とし、魔法攻撃及び後方での支援・援護の役を担っていた。


「食べ物の情報いる? うちの好きな食べ物の情報いる?」


「そりゃ必要だろ。死ぬ前に何が食べたいか分かるし……」


「最後までおもてなし精神を忘れないってことね。なるほどねー」


 咲愛は腕組みをしながら、黒瀬の詭弁を軽く聞き流す。


「マスター、私たちこれからどうするの? まあ私はマスターに従うだけの淫乱肉便器奴隷なんだけど」


「いや、18禁奴隷ではないんだけどな」


「さっき、胸、揉みましたよね?」


 莉愛は先ほどのことを根に持っているようで、棘のある語気で俺を突き刺してきた。


「あれは……あの、なんだ不慮の事故だ」


「マスター、不慮の意味知ってる?」


 冷ややかな目で俺を蔑む莉愛、あれ? 俺ってマスターなんだよな……


「悪かった悪かった……」


 この件についてしばらく話した後、俺は話を本題へと戻す。


「で、俺たちの向かう先なんだが、まずは死骸都市オーバラライデンに向かうことを目標としたい。あと、俺たちを狙う刺客がいるなら、まずは戦力を強化しないとな」


 俺は至極真っ当な意見を述べた自信があった、マスターとして一番しなければならない最善の選択をしたつもりだった。

 だが……


「マスター、死骸都市オーバラライデンってどこにあるか知ってる?」


「あの大屍魔窟マレドードゥンの最下層にあるんだよ」


 もちろん、俺はそんなこと知っている。だって、そこには俺の父さんがいるのだから。


 黒瀬家は一族で死霊使いである。ということはもちろん、父の黒瀬懶斎くろせらんさいだって……


「結局、お父さんに会いたいってこと?」


「まあ、将来の花嫁候補をお義父さんに見てもらうってのも必要よね……」


 茶化しながら咲愛はそう言っていたが、俺の思いが伝わっていない風ではなかった。


「マスターが行くって言うならあたしたち行くしかないでしょ! まあ何回も死ぬだろうけど」


「マスターがそこまで言うなら私たちも随行するわ。――秒で死ぬけどね」


 二人とも、大屍魔窟マレドードゥンへ行くことには消極的だった。どうやら俺の思いと二人の思いは異なるらしい。

 

 俺は大屍魔窟マレドードゥンについて二人が知っていることを教えてもらうことにした。


「すべての生き物が辿り着く最終駅。最果ての場所、命の終焉所って感じでしょ。大屍魔窟マレドードゥンにはどんな骨だって死体だってあるだろうけど、それ故にそこで生きている生き物はべらぼうに強い。だって死のエネルギーに打ち克ってるわけだからね。生命エネルギーが尋常じゃないはず。ってかぶっちゃけラストダンジョンみたいなイメージあるよね」


「初期装備で魔王城に向かう勇者がいるのかって話よね。無謀、あまりにも無謀だわ。それでも行くって言うなら止めはしないけど」


 俺は骨がたくさんある場所と言うことは知っていたので、ただのゴミ捨て場、死体遺棄の廃棄場とばかり思っていた。そこはやはり俺が思っているほど単純な場所ではなかったようだ。


「じゃあ、俺たちの行く末を占ってみるか」


 俺はそう言ってポケットを弄る。こういう時のために持ってきていたものだ。


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