第6骨「狙われる!死霊使い!」

「空っぽじゃん! ちょっとマスター!」


「マスター! 何逃がしてるの! あんな大物!」


 咲愛と莉愛が俺を叱責するも、俺は普通に間違いなく確実に術をかけたはずだ。その場からあんなに大きな死体が消えるなんてありえない……


「ちょっと待って、マスター! これ……」

 莉愛が拾い上げたのは、一つの薄汚れ腐敗が進んだ骨。


「遺骨的な? それともいくつか集めたら願いが叶う的な?」


 咲愛がふざけたことを言っていたが俺はそれを無視して推論する。


「もしかして……俺より上位の死霊使いが使っていた術……」


 そもそもこの町の近くにこんな凶悪なモンスターがいたこと自体が謎だったが、これが誰かの差し金だったと言うことならある程度納得できる。


「咲愛や莉愛を殺したのは偶然じゃなかったかもしれないな……」


 誰かが意図的にこの二人を殺すために刺客を用意した? この二人を殺さないといけない何か理由があった?


「マスター、何難しい顔してるの? おっぱい揉む?」

 莉愛がごくごく自然に、俺の右手をグッとつかみ自分の右乳房にあてがおうとしてきた。


「ちょっと揉むわ。もみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみ」


 いやはや俺はマスターだ、俺はこの二人を好きなように扱うことができる、いやはやマスターになって良かった良かった。もみもみ。


「ちょ! そこまで揉んでいいとは言ってないわよ! ってか、普通冗談だと思うでしょ! 本当に揉むマスターなんていません! マスター、自害せよ!」


 うっかり自害命令を出されてしまった俺、いやそれマスターが言うセリフだから!


「咲愛も何かやった方がいい? 咲愛のこめかみ、触る?」


 こめかみ触ってどうなるんだよ! と勢い良くツッコミをして、こめかみをさわりながら話し始める俺。


「いやさ、咲愛、莉愛。二人の仇討ちはまだ終わってないかもしれない……」


 俺の推測を二人に果たした後、二人は顔を合わせて言った。


「じゃあ、私たちを狙う誰かがいたってことなの? あたしたちそんな悪い事やった覚えないんだけど……」


 身に覚えのない罪を着せられている恐怖に怯える莉愛。誰だって知らない誰かが自分を殺そうとしているなんてことが分かったらいてもたってもいられないだろう。


「って言っても莉愛、あたしたち死んじゃってますから。もう死んでもまた生き返ればいいかってなりますから」


「まあ、たしかに」


 自分たちの不死性について再認識したところで、莉愛は平静を取り戻した。


「ってかさ、あたしたちを殺そうとするならこんな魔獣じゃなくても良かったわけだし、あたしらじゃなくてマスターが狙われてる可能性だってあるんだよ」


 咲愛は落ち着いた表情で俺の方を一瞥する。俺自身が狙われているなんて考えもしなかったが、咲愛の言う通り俺自身が標的だった可能性だって大いにあった。


「ま、この中の誰も狙ってないことだってあるんだけどね」


 莉愛はあっけらかんにそう言っていたが、この言葉の中にはそうであってほしいと言う願望も含まれていたように感じた。


「そうだな、俺の思い過ごしだったらいいな……」


 俺たちは突然現れた脅威との戦いに勝利した。この後俺は枯れない桜の木の下で、二人たちの前世についての話をゆっくりと聞くことにした……



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