第19話

【表現】『』は口に出さぬ言葉


 獅子王との初戦、人の英雄であった少年は恋人を守りながら戦い、勝つことを諦めた。


 二度目の戦いは負ける事が許されない。


 剣と成った自分の役割を果たす為に、それとも他を愛せる魔女の為に?


 他者を愛せないと自覚する少年は、他者を愛する少女の夢に生きる意味を依存した。


 人間社会から迫害され、孤独になった少年は夢を持たず、刹那的に生きていた。


 出会った少女は人間を救うために力を使うと語り、他者から受け入れられる未来を信じていた。


 自分が否定した愛を持つ少女に憧れ、欲し、共に歩むことで自分をそれを得たような気分になっていた。が、得てはいなかった。


 少女に裏切られたと思い、魔女と繋がり、少女を裏切った。


 少女を愛していた筈の自分は容易に少女を裏切ってしまった。


 少女を愛する自分は錯覚で、自分には他を愛する心など存在しないと思わずにはいられない。


 だからこそ、自らを剣に仕立て、魔女の物に成った。


 物であれば、愛せない心が有っても不自然ではない。


 愛する心持つ人間と違い、道具が何かを愛することなど無いのだから。


 魔女は純粋だった。


 人間と仲良くできると信じる魔女は少女に似ていた。


 だから、なのか。


 少女の代わりに魔女を得たから、少女は不要になったから、愛は、執着は失われたのか?


 それが実態なら、自分には心など無いのか――と考える少年は人の心を持たない自分を人間と思えない。

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