第7話

【表現】『』は口に出さぬ言葉


 人間を害さず知恵や技術を教わりたい魔女は方策を探していた。


 『魔族に奴隷化されている人間を助けた見返りなら教えてもらえるかも?』と考えたが魔界の序列で下位に位置する魔女は上位の魔族に勝つ見込みはないと思い諦めていた。


 が、沢山の魔族を殺した人の英雄なら上位の魔族に勝てると考えて少年を誘惑した。


 魔女は少年と契約を交わせたが〝恋なき感情〟から交わした契約を過信せず〝恋で服従〟させる事を妥協する気はなかった。


 人間社会で生きる意味だった恋人を失い、魔族と身体を重ねた少年は人間社会に戻りがたいと分析する魔女は戻らない理由を作ろうと目論んでいる。


 少年と関係を深めれば父が母に敵わなかった様に少年を自分へ依存させられると信じて疑わない魔女は『今日こそは主導権を渡さない!』と意気込んだ。


 夜、少年から別々の寝具で寝たいと提案されたが聞き入れず、母が父を誘惑した情欲を掻き立てる魅惑の衣服を着て同じ布団に入った。


 入った……が寝息を立てる少年を見て『一晩で飽きられたのか!?』と思ってしまったが『疲れているから(推測)』と考えて動揺する心を落ち着かせた。


 眠気に負けそうな魔女は『明日こそは』と自分へ誓いながらまぶたを閉じた。

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