第3話

【表現】『』は口に出さぬ言葉


 愛を囁き合った人が奪われた怒りは愛した人や王子へ向ける他なかった。


 害意を促す強い感情は悪行を成せぬ倫理観に屈し、行き場を失っていた。


 「裏切った女など捨てて、私に乗り換えないか?」と告げる獣耳と尻尾が生えた異性(魔女まじょ)から迫られた少年は情欲を掻き立てられた。


 『彼女もやったから』と自分へ言い聞かせた少年は魔女の誘いに乗った。


 言い訳し、先を考えず、欲望に身を任せ、身体を重ねた少年は醜い感情を吐き出す為に魔女の身体を利用した。


 行為を終えて疲労した少年の身体と精神は睡眠を拒まなかった。


 目覚めた少年は同じ寝具で眠っている魔女を見ながら事を反省した。


 憎悪を吐き出し、冷静さを取り戻せた少年は眠る魔女に感謝しながら静かに服を着て部屋を出た。

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