第25話

 ある場所では上から見た情景が赤い色や黒い煙に包まれているところがあった。

 戦場だと分った。


 何もできないこれを止める為に自分は来たのに。そう豊の顔は涙であふれた。


 天使の書に挟んでいた、ある詩を取り出し豊は歌った。






~聞えるのは悲鳴と銃声~


~ココは地上での地獄~






~甘い蜜を吸っているのは誰だろう~





~ボロボロの身体を引きずって~



~一滴の水を求めて~






~一歩一歩と前に歩く~



~心音のない 大事な家族を背中に背負い~





~絶望と恐怖に~



~明日への希望をどうやって見つけ出そう~





~こんな時でも星は綺麗で~



~自然と涙が一粒落ちた~






~背の重みと世間の重圧に~



~今日も一歩歩く~




~死んだ方が楽かもしれない~





~何度も何度もそう思う~












~だけどこの記憶がある自分が~



~生き続け 生き抜き~








~二度とこんなことが無いように~




~今はそんな前向きな事は思えないけど~





~ボロボロの戦地に唯一咲いている花を見て~



~泣きながら 今日も僕は生きる~









 豊の歌を聴きながら境も泣いていた。

 今は何もできない自分に思いが込み上げて。




 つられて周りの皆も涙が溢れ出した。

 皆で歌にありったけの思いを込めた。













 大きな災害があった事をラジオで聞き豊達は罪車でその場所まで向かった。


 道路は割れ、山も崩れ家も崩れそこには無残の村の傷跡があった。


 罪車を危なくない所に置き、瓦礫の片付けを手伝いながら人々を見た。



 罪車で空に昇りながら皆で歌詞を考えた。










~昨日まで笑ってた~




~毎日毎日当たり前だった幸せ~






~当たり前すぎて それがどんなに幸せだったか~



~あの時の私は気づけなかった~








~その日から人生は一変した~





~天の怒りの様に~




~無残に姿を変えた自分の大好きな居場所 ふるさと~







~なんの偶然が重なり~



~なんの不運が重なり~






~こんなことが起こってしまったのか~





~居なくなった大好きな人達~









~今は空っぽになってしまったこの心は~



~怒りをぶつける元気もない~





~暗闇の中 真っ暗闇の中~




~今は未来に向けて 踏み出す勇気がない~



~ただ茫然と空を見上げた~






~生き延びた~






~同じ境遇の一人の少女が~



~くれた おにぎり~




~食べながら 気が付くと涙がこぼれていた~






~汗と涙と鼻水と 顔をぐちゃぐちゃにしながら~





~私は初めて泣いた~





~気が付くと隣の少女も泣いていた~



~大泣きした後 少女と目が合い~



~決意するように目配せした~



~少女も大きく頷いた~






~無くなってしまったもの~




~元に戻すことは難しい~





~だけど 励まし合い 前に進んでいこうと思う~








~あの時の幸せに 少しでも近づけるように~











 そんな風に各地を転々とし、お金が無くなると大人達は日雇いの所で働き、寝床は空での罪車の中。

 気が付くと三ヶ月の月日が流れていた。

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