第24話
ある場所では心と体の姓が違ってしまったり、人と少し違う所がある人達が、生きにくい世の中で自分自身を隠して生きている人達を見た。
見たと言うのは語弊があるかもしれない。
ある町で1冊のノートを拾った。そこは以前ひどい雨による災害で家が壊され、構築されてきた所だった。
そこで拾った一冊のノートに少女、いや少年と言った方が正しいだろうか。
その子が書いたであろう日記が記されていた。
その子以外誰も見た事がなかったであろうその内容、その子の秘密の叫びが記されていた。
ノートの内容から察するに女性の身体に生まれてしまったが自分は、自分の心の中は男だと書いてあった。
そう強くは言い切れないが皆が可愛いと思うものに興味がない。
少年の好む遊びに惹かれる自分への戸惑い。
それをおかしいと言う周りに自分は生きていてはいけないのだと思い込んでしまっている内容が綴られていた。
親友の事を、自分がそう思い込もうとしたが女性として意識してしまっている自分に気付き、それを隠そうと必死に良い女性を演じる自分。
女性らしくすればするほど感じる違和感。
それが世間では正しいのに自分自身は自分がおかしいと思ってしまう。
その子の悩みでノートは埋め尽くされていた。
豊は自分の世間知らずさに戸惑っていた。
正直、子供の中で自分が一番不幸だと思っていた時期もある。
だけど不幸か幸せかを決めるのも自分次第だと最近気づいた豊はこのノートの子の様に自分らしく生きれず世間の差別と見えない戦いを繰り広げている人達に少しでも思いが届くように豊は一気に詩を書き綴った。
そして空の上からその人達の思いが少しでも伝わる様に豊は歌った。
~僕って変かな~
~そう気づいたのは何歳頃かな~
~周りの変化についていけない自分に~
~周りとの考えが違う自分に 気が付いた~
~自分がおかしいと思った~
~自分はこの世に存在してはいけないと思った~
~両親 友達の何気ない言葉~
~その言葉に打ちのめされては~
~生きる為 僕は嘘をついた~
~女の着ぐるみをかぶりながら男であることを隠して 隠して~
~誰よりも女らしい自分を演じ 周りを騙した~
~生きる為に~
~だけど誰にも話せず 孤独な自分は~
~生きていない 物理的に生きていても生きていなかった~
~そろそろ孫の顔が見たい いい人居ないの?~
~そう聞く両親に~
~心の壁は厚くなった~
~ある人との出会いで 僕の人生に光が差した~
~胸を張って自分らしく生きる事~
~ありのままで生きる事~
~そんな自分を認めてくれるそんなあなたと笑える今日が~
~死にたい そう思っている君へ~
~今は辛いと思うけど ありのままを見てくれる誰かにいつかきっと出会えるから~
食べるものを調達する為、降りた村で豊が育った環境ととても似通った風景を見た。
ボロボロの服装、ギラギラした目つき。
どうにかして生きようとハンターのような目で回りを見渡すものや生きていてもしょうがないと寝転がり頬けたような人の姿を見た。
座り込み、息が上がっている男性に、豊はお茶をプラスチックのコップに注ぎ渡したが、胡散臭そうな目線を向けた男性はそのお茶を払い豊の顔にお茶の水滴が滴った。
何もできない自分に罪悪感で胸を抑えていた豊を境は小脇に抱え罪車に向かい空に上がった。
~今ある幸せを当り前だと思わないで下さい~
~寝る場所 食べられる事 笑える事~
~それを当り前に持てる事がどんなに尊くてどんなに幸せか~
~偉そうに言える立場じゃない僕がこんな事を言うべきではないが~
~当り前な事を当り前にできない者が多く居る~
~この世の中で~
~今ある幸せを大事にして欲しい~
~地面に這いつくばって生活していたあの頃~
~食べられる雑草を見つけた時~
~次の日も生きていけると思った~
~笑い方なんて忘れてしまった~
~たまに見かける親子連れに~
~見た事のない自分の親を恨んだ~
~どうせ死ぬなら~
~僕も連れて行ってほしかった~
~そう思っていた~
~ずかずかと閉ざした心に土足で入り込んできたあなたは~
~今では 僕の中で欠かせない存在~
~死ななくて良かった~
~心から笑った日 久しぶりの涙がこぼれた~
~温かい今日を こんな僕にも感じることが出来た~
~今が絶望な貴方 死なないで下さい~
~僕は思う 生きてて良かったと~
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