第23話
罪車は少しずつ宙に浮き始めた。
周りには見えていないのか驚いている人の表情は見えない。
どんどん上に上がっていき雲の真下まで来た。
「人の心も変わっちまってあんな世界になっちまっているのに上まで来ると綺麗だな。後ろの皆、準備は良いか? みんなで手を繋ぐんだ。豊はマイクを持つんだぜ。でヌイ、ナリ、デビも声に乗せて人の心に種を巻き根を張る様に心を籠めるんだ」
陽の声に闇もしわくちゃな顔で頷いた。
「坊主、お前がリイだったとはな。俺がふがいないばっかりに苦労を掛けたな。あの本は役に立ったか? お前に渡して正解だったようだ。俺も記憶の底でやるべき事を覚えていた様だ。準備は良いか? 」
闇は振り返り豊の目を見て笑い豊の頭を撫でた。
「準備なんて、僕、人前で歌ったことないし」
無理だよ。
あんなでたらめな歌。
暗いし、皆の気持ちに明かりをつけて種を植え付けるなんて。
僕の歌よりもっとふさわしい歌があるはずだし、未羅や境だって上手いはずだよ。
「色んな思いをしてきたお前が歌うことが大事なんだ。それに豊、豊の歌は俺達、四人と三匹しか聞いてねーよ。大丈夫だ。なあ? 」
優しく笑う境の顔に勇気をもらった豊は始めはボソボソと小さく歌い始め、次第に大きな声で歌い始めた。
~目の前には道はない そう思っていたあの頃の僕~
~悔しい 苦しい 悲しい~
~こんな思いをしているのは僕だけだろうか~
~そう僕は 色々な思いを紙切れに乗せて 音に乗せて~
~歌った~
~毎日同じ繰り返し 分かっていたけど歌った~
~明日は今日と違う明日が待っていると信じて~
~3歳ぐらいの少女が転んだ~
~起こすのを手伝おうと立ち上がった僕~
~僕より先に少女を起こした大きな手~
~少女の父親~
~妬ましく思った自分が汚く思えて~
~思いを綴る紙切れを黒く塗りつぶした~
~あの頃の僕に伝えたい 出逢い一つで人生は変わる~
~運命は変わる~
~今面白くない人生を送っている人は未来でとっても面白い人生が待っているから~
~この暗闇の先は ずっと暗闇かもしれない~
~さらに深い闇が続くかもしれない~
~だけど 考え方一つで 生き方は変わる 未来は変わる~
~笑顔を見ると 笑顔になる~
~ただそれだけ~
~一緒に笑える その人との出会いが~
~宝物の人生になる~
~今日も僕は歌う 色々な音を 紙切れに乗せて 声に乗せて~
豊の声に合わせてヌイとナリとデビのパワーの光が音に都に星の隅々まで行き渡った。
豊は記憶の中をループするかの様にハイ状態になり何回も繰り返し歌った。
少しでも辛い思いをしている誰かの為の未来に向かって心の底から歌った。
その後、豊一行はさまざまの所に出向き、実際に苦しんでる人を見てその人達の心情を思い、つたない歌だが歌った。
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