第21話
目が覚めた青年は性格が一八〇度変わっていて、自首すると言い出しており、裁判中だった闇の無罪を釈明できた。
しかし闇は牢屋に入る必要があったのに青年の罪だと分ったとたん執行猶予三年と刑が変わった事に、この国は一人一人の考え方がおかしくなっていると実感した豊だった。
青年を警察に受け渡し、ヨボヨボになっている闇に陽は肩を貸し歩き出した。
「随分助けが遅いじゃねーか」
闇の憎まれ口に陽は苦笑いを零す。
「悪い、生きてて良かったよ」
陽と闇の横を三人と二体が歩き罪車に乗り込む。
闇が大きな咳を数回繰り返し陽は闇の背を擦った。
今回は助手席に闇、運転席に陽、三人と二体は後ろ座席に座った。
「ありがとな、俺も無駄に長生きして良かったよ、無駄にならなかった。ほら本を貸しなよ、それっ天使の書だよ。まあ肝心なこと忘れちまって俺も自業自得だわな」
闇が天使の書の赤い石に手をかざす。
闇は牢屋での色々な辛いしごきを思い出しながら手をかざした。
その時、赤い石の、にぶみの色が消え真っ赤に光り、天使の書のページが少しゆっくり目に開き、黄金の文字で『蛇神』と言う文字が浮かび上がり、真っ赤な小さな五cmの長さの蛇が現れた蛇の頭にも一本角が生えていた。
「デビ、えらい小っちゃくなっちゃったね、可愛らしい」
豊は小さなデビの角を撫でた。
『リイ様いくら何でも失礼です。好きでこんな姿になったんじゃないです。境が邪悪な心が無さすぎるから』
ぶつぶつ言うデビを助手席に向かって身を乗り出した境が、優しく掴み胸に引き寄せる。
「俺の所為でそんなに小さくなったのか?そりゃー悪ーことしたな」
困った顔をしながら境はデビの頭を撫でる。
デビも少し恥ずかしそうに境の胸に擦り寄った。
「よし、これからどうする。この星を救うって言ってもな。こんなになっちまった世界、どうやって救うよ」
陽は路肩に車を止め、小さなテレビのモニターをみんなに見せた。
そこには戦争での裏側で食べるものがなくなり餓死寸前になっている所や、災害で家や人が流され絶望してしまっている人々、一見、幸せそうに見えても色々な偏見、差別により苦しめられ自殺に追い込まれそうな人々、貧富の差で人を奴隷のように扱う場所、様々な画面が映し出された。一行は任務の重みと先の長さで途方に暮れた。
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